工学教育を核に実践研究を行うタフツ大学CEEO
セミナーは4部形式で行われ、最初に「STEM/STEAM教育」について解説があった後、アメリカのタフツ大学CEEO(Center for Engineering Education and Outreach)に所属する研究生が、STEAM教育の歴史やCEEOで行っている最先端の教育研究や実践事例について語った。
タフツ大学はマサチューセッツ州にある私立大学で、世界でも最先端となるSTEAM教育を実践している。今回登壇したのは、同大学のCEEO(Center for Engineering Education and Outreach)で研究を行っているYume Menghe Xu(以下、ユメ)氏、Soham Gaggenapally(以下、ソハム)氏、Alan Deutsch(以下、アラン)氏の3名だ。
CEEOは工学教育を核に、「教育研究」「工学研究」に加えて、学習機会の少ない学校でサポートを行う「アウトリーチ」の3つの活動を主に行っている。次世代の子どもたちがイノベーターになれるよう、幼稚園から大学までのすべての学生を、革新的かつ研究に基づいた工学体験の教育を行うことをミッションとし、工学の学習をサポートする環境と技術について、研究や開発、分析をしている。
ユメ氏は最初にSTEM教育の歴史に触れ、「STEMという言葉は新しいものではなく、以前から研究されてきたもの。近年は、どうやってよりよいSTEM教育を行うかといった議論が盛んになっている」と話した。そうした中で、工学教育研究のトレンドとして「分野横断」「文化の差異を考慮する」「社会にもたらす影響への意識する」という3点を挙げた。「学習者一人ひとりにとって意味のある文脈で教えること、単に技術を作って終わりではなく、それが社会に対してどのような影響を与え得るかを考慮しながらプロジェクトを進めることが大事だ」と語った。
ユメ氏はさらに、「STEMにはさまざまなアルファベットが含まれるが、大事なのは『どのような教育を行うか』だ」と述べ、STEAMについては、「『A』には、芸術としての『アート』と『リベラルアーツ』の2つの解釈があり、分野横断や自己表現ができ、世の中をクリティカルに見る目が養われるなどの効果が期待できる」とした。
続いて、先に挙げたトレンドに基づき、ツールをデザインするポイントを3点紹介した。1つ目は「学習者が自分で問題を定義する」ことだ。CEEOでは、物語の中の問題を探す「Novel Engineering」や、自分のコミュニティの問題を探すプロジェクトなどを実践している。
2つ目が「学習者が自分で解決策を作り出す」こと。エンドプロダクト(最終的な生産物)を提示せず、アイデアとインスピレーションをちりばめることが大事だという。
3つ目は「そもそも学習者に、自分の持っている広い将来の可能性を認識させる」ことだ。ユメ氏は「工学に対する興味と粘り強さは『自分らしくいられるアイデンティティ』と『得意からくるパフォーマンス』『周囲からの承認』から生まれる」と話し、教育現場でできる取り組みを紹介した。
また、ユメ氏は「学習者が興味を持ち、自分で舵を取ることができる。1つだけでなく、複数の解決策を検討できる。何度でも改善して作り直すといった反復ができる。作り続けられる……このようなテクノロジーを開発するように、CEEOでは心がけている」と解説した。
最後に、CEEOのスローガン「Kids Can…Think…Invent…Discover…Change the World」を紹介し、「『子どもたちが持っているさまざまなアイデアは工学につながっている』と承認してあげることが大事だ」と語った。