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EdTechビジョナリーインタビュー

慶大生が手掛ける探究学習を個別最適化するサービス──高校時代に感じた「モヤモヤ」が誕生のきっかけに

EdTechビジョナリーインタビュー 第17回

 高校で必修化された「総合的な探究の時間」。しかし、生徒自身が「特に取り組みたいテーマがない」「やりっぱなしで、どのような力が身についたのかわからない」といった悩みを抱え、探究学習へのモチベーションが上がらないという問題が存在している。さらに教員は多忙なため、生徒一人ひとりに向き合い、丁寧にフィードバックすることも難しい。こうした問題を解決するために開発された「クアリア」は、現役大学生の起業家が手掛ける探究学習のサービスだ。誕生のきっかけは自身が高校時代に感じた「探究学習に対するモヤモヤ」からだという。開発者である株式会社クアリア CEO/CTOの平田正英(しょうえい)氏に詳しく伺った。

株式会社クアリア CEO/CTO 平田正英氏
株式会社クアリア CEO/CTO 平田正英氏

「フィードバック不足」により探究学習が進みにくくなっている?

──クアリアのサービスが誕生したのは、平田さんご自身が高校時代に感じたモヤモヤがきっかけだと伺っています。どのようなことを感じていらっしゃったのですか?

 私が通っていた高校は探究学習に力を入れており、全員が海外に留学する2年生以外は、興味のあるテーマごとに分かれて「ゼミ活動」に取り組むという特徴があります。幼いころからプログラミングが好きだった私は、1年生・3年生の2年間、プログラミングを学んだり研究したりする「STEMゼミ」に所属していました。

 ただ日本に戻ってきた3年生のとき、違和感を覚えたんです。2年生ではオーストラリアに留学しており、現地の学校では文系・理系関係なく興味に応じてプログラミングの授業を受けることができました。ですが、私の高校は理系クラスの生徒のみがプログラミングの授業を受けることができて、文系クラスの生徒には選択の余地すら与えられていなかったんです。私自身は理系クラスでしたが、文系クラスの生徒がプログラミングに触れる機会自体がないことに、もったいなさを感じていました。

 幸い、ゼミの活動内容をどう決めるかは生徒の自主性にゆだねられていたので、私が「STEMを包括的に学ぶゼミ」から「プログラミングを学ぶゼミ」に方針を転換させ、文系・理系を問わず、ゼミに所属する3年生と1年生に教えることになったんです。

 その後、カリキュラムを作って実際にプログラミングを教える段階になったのですが、決して順調とは言えませんでした。学びたい分野や意欲は人それぞれなので、「どうすれば高いモチベーションを保ってもらえるだろう」「楽しく教える方法はあるのか」と悩み、「楽しみつつ学びにもなるカリキュラムをいかに作るか」という点に注力しました。これが、私が「教育」に対して興味を持ったきっかけです。

 クアリアの共同創業者である芦野(編集部注:クアリアの代表取締役である芦野恒輔氏)と出会ったのもそのころで、芦野の前職であるベネッセの探究発表会に私が参加した際に声をかけてもらいました。ゼミの運営にあたり、例えばメンバーへアンケートをとる際、設問をどう決めればよいのか、尺度はどうすべきなのかなど、当時高校生だった私にはわからないことだらけだったので、よく相談に乗ってもらっていました。

 ただ、私は運よく芦野に出会えて、彼や彼がつなげてくれた方々からアドバイスを受けることができましたが、多くの高校生はそうではありません。誰からもフィードバックがもらえないままだと、どう進めればよいのかがわからなくなり、成長機会が減ってしまうのではないかと感じていました。

 私の出身校は先生方も積極的ではあったのですが……とは言え、ゼミは10~20人の生徒に対して先生が1人という状況です。これでは全員にしっかりとしたフィードバックをすることはできません。また、課題として論文を提出する必要があったのですが、返却にも1カ月以上かかっていました。先生方は忙しく仕方ない面もありますが、生徒にとっては1カ月で取り組む内容が変わっていることもあります。積極的な生徒であれば学外の専門家の方と連絡を取ることも考えられますが、実際にはそうしたケースもあまりなかったように思います。こうした要因が絡み合い、「探究活動がなかなか進んでいないのでは」と感じていました。

──これらの経験から「探究学習へのフィードバックが不足している」と考えるようになったのですね。

 はい。あと、やはり年上の方から「すごいよ!」と声をかけてもらえるのは成功体験になりますし、自己効力感も高まります。私自身も当時、大人の方と話してほめていただけることはうれしかったし、うまくいかなかったときも「もう一度やってみようかな」と思えるきっかけになりました。「自信がつくことで探究活動が進む」という好循環を生み出すためにも、フィードバックは重要だと考えています。

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1人の高校生に向けた「Wordファイルでのフィードバック」が始まり

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この記事の著者

森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

EdTechZine編集長。好きな言葉は「愚公移山」。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


関口 達朗(セキグチ タツロウ)

 フリーカメラマン 1985年生まれ。  東京工芸大学卒業後、2009年に小学館スクウェア写真事業部入社。2011年に朝日新聞出版写真部入社。  2014から独立し、政治家やアーティストなどのポートレート、物イメージカットなどジャンルを問わず撮影。  2児の父。旧姓結束。趣味アウト...

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