日本は「非常に低い」レベルへ転落
「EF EPI」は、同社が提供する無料のオンライン英語力測定テスト「EF SET」などの受験データに基づき算出された指数だ。2025年版は、世界約220万人のデータをもとにしている。
11月19日にEF東京本社で開催された発表会において、EF Japanの川合遼氏は「日本の順位は前年の116カ国中92位からさらに後退し、123カ国中96位となった」ことを明らかにした。スコアカテゴリーも、これまでの「低い(Low Proficiency)」から、今回初めて「非常に低い(Very Low Proficiency)」へと区分が下がっている。
この「非常に低い」レベルの目安について、川合氏は「簡単な自己紹介ができる、簡単な合図を理解できる、海外からの訪問者に基本的な指示をすることができるといったレベル」であると説明した。
今回の順位低下の背景には、2025年版から導入されたAIによる「スピーキング・ライティング」の自動評価の影響もあると見られる。EF EPI分析チーム責任者のケイト・ベル氏は、日本の結果について次のようにコメントを寄せている。
「日本では、読む・聞くと比べて、話す・書くのスコアが相対的に伸びにくい傾向があり、今回のAI評価によってその差がより明確になった。英語力全体の停滞は世界共通の課題だが、日本では4技能のバランス改善が鍵となる」(ケイト・ベル氏)
アジア諸国との比較で浮き彫りになった課題
さらに、今回のスコアをアジア地域25カ国に限定して見ると、日本の立ち位置はさらに深刻だ。日本のアジア内順位は17位(スコア446)となり、下位グループに属する。
上位には、英語を公用語・準公用語とする24位のマレーシア(スコア581)や、28位のフィリピン(スコア569)が「高い(High Proficiency)」能力レベルでランクインしている。これらは英語教育が進んでいる国として知られる。
そして、注目したいのが東アジアや東南アジアの近隣諸国との差だ。例えば、韓国は48位(スコア522)で「標準的(Moderate Proficiency)」の評価。日本とは48ランク、76ポイントものスコア差が開いている。ベトナムは64位(スコア500)と「標準的」レベルを維持。86位の中国(スコア464)も日本より上位に位置している。
かつては競合していた国々が順位を維持、あるいは上昇させる中で、日本だけが「非常に低い」カテゴリーまで後退している。この現状は、グローバル時代における人材競争力の低下を危惧させる。
また、今回の調査では、国内における英語力の地域格差も浮き彫りとなった。関東地方がスコア478と最も高い一方、中国地方は436と最も低く、都市部と地方で大きなポイント差が生じている。
年齢別で見ると、世界的な傾向として18歳~25歳の若年層のスコア低下が見られる中、日本も同様に若年層の伸び悩みが指摘された。これについて川合氏は、「インターネット環境や学習機会の格差、コロナ禍の影響など複合的な要因が考えられる」としつつ、AI翻訳等の普及により「英語を話す・書く」経験が相対的に減っている可能性についても言及した。

