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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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イベントレポート(英語教育)

留学生に選ばれる大学になるためのポイントとは? 高等教育「国際化」の課題を日・米の事例から考察する

「Duolingo English Test リーダーシップセミナー」レポート


 Duolingoは、オンラインでいつでもどこでも受験できる英語能力認定試験「Duolingo English Test」を開発・展開している。その試験の日本本格展開にあたって、9月25日に「Duolingo English Test リーダーシップセミナー」を開催。セミナーでは、留学や国際交流に携わる大学関係者に向けて「高等教育をめぐる世界的視点」と題したいくつかのパネルディスカッションとプレゼンテーションが行われた。大学の留学生誘致や国際教育の意義、留学生への支援について、アメリカの大学・日本の大学の担当者それぞれの視点で議論された模様をレポートする。

Duolingoが手掛ける、誰もがアクセス可能な英語能力試験

 ゲーム感覚で学べる無料の言語学習アプリとして有名な「Duolingo」。そのDuolingoが提供する、オンラインの英語能力認定試験が「Duolingo English Test」(以下、DET)だ。セミナーの前半では、DETの概要と開発の裏側、セキュリティに関する仕組み、受験者データからひも解く普及状況について解説された。

 DETは、海外大学進学にあたって英語能力の証明にも利用できるほど信頼性が高い認定試験で、場所や時間に縛られず、低コストで受けられる点が特徴だ。この点について、「『最高の教育を開発し、誰もが受けられるようにする』というDuolingoのミッションのもと開発された」と、DETのゼネラルマネージャー Rogelio Alvarez氏は述べる。

Duolingo English Test ゼネラルマネージャー Rogelio Alvarez氏
Duolingo English Test ゼネラルマネージャー Rogelio Alvarez氏

 現状の多くの英語能力試験は「(受験料が)高価すぎる、会場が遠すぎる、予約が取れない」といった問題を抱えており、優秀な学生の可能性を狭めている。DETは「この現状を変えるべく、学生が自分のパソコンから安価にテストを受験できるようにした」という。

 DETは2016年にローンチされ、現在ではスタンフォード大学やイェール大学といった名門大学を含む全世界6000以上の大学・教育機関で採用されている。開発にあたっては、有効性と品質の高さが重視されており、AIを活用しながらデジタルアセスメントに対応したテストを実現している。

 今後は、TOEICとの連携や、国際的な英語能力基準であるCEFR(セファール)との対応も計画されているという。

留学生に魅力を感じてもらうには? プリンストン大学とダートマス大学の取り組み

 セミナー後半では、大学の留学生受け入れに関するパネルディスカッション2つと、京都先端技術大学の事例セッションが展開された。

 最初に、アメリカのプリンストン大学とダートマス大学の入試担当者が登壇し、DuolingoのKevin Hostetler氏のファシリテーションでパネルディスカッションを行った。

左から、DuolingoのKevin Hostetler氏、ダートマス大学の入試担当 Todd Denning氏、プリンストン大学の入試担当 Justin Parsons氏
左から、DuolingoのKevin Hostetler氏、ダートマス大学の入試担当 Todd Denning氏、プリンストン大学の入試担当 Justin Parsons氏

──貴学の留学生の出願プロセスはどのようになっていますか?

Denning氏:ダートマスではまず書類選考を行います。「授業を理解するために必要な英語力があるか」という視点でスクリーニングします。ネイティブスピーカーのような完璧さは求めませんが、授業内のディスカッションや教授との対話に対応できるのかを重視しています。

 また、英語を使うのは授業内だけではありません。クラスメートやルームメイトとコミュニケーションをとるためにも、語学は留学生活においてベースとなります。

Parsons氏:入学の段階で英語力は重要です。プリンストンでは学校のテストや外部のテストなどのデータを取得することができるようになっているので、そういったデータを参照して学生を選抜しています。

──日本の大学も国際化を目指し、留学生を増やそうと取り組んでいます。海外の学生に大学の名前を知ってもらい、その大学を選んでもらうためにはどのような取り組みが必要でしょうか?

Parsons氏:キャンパス内のサポート体制が重要です。単に海外から学生を集め、入学してもらえばよいわけではありません。

 慣れない環境にやってきた留学生を、学業面ではもちろん、移民手続きや休暇中の滞在先、キャリア・就職などの面でもサポートすることが重要です。プリンストン大学では、学生や家族が今抱えている多くの不安を認識し、共感を示しつつ、可能な限りの支援を提供しようとしています。

Denning氏:同感です。ダートマス大学は「人間的な要素」、親切で協力的な学生コミュニティをキャンパス内に築くことに注力しています。留学生が安心できる環境が大事です。

 高校との直接的な関係構築も重要です。先週も中国の高校を訪問したところ、生徒たちに「以前はダートマス大学を考えていませんでしたが、興味が湧きました」と言ってもらえました。

 ウェビナーに参加する方法を知らない学生にも本学を知ってもらうような、ブランド認知の活動が重要です。Webでの訴求のROI(投資対効果)を越える、各大学の独自性とは何か。そしてそれを志願者やその家族にどう伝えるかが重要なのです。

──入学志願者の関心を維持し、さらには合格後も進学を決断してもらうために、具体的にどういった施策を行っていますか?

Denning氏:私たちの業界では「入学者選抜のファネル(ろう斗)」と呼ばれる概念があります。

 世界中に存在する学生たちが見込み志願者となり、何らかの形で入学事務局と関わりを持ちます。私たちの目標は彼・彼女らを正式な志願者にすることですが、その学生にとって最適な環境がダートマスに常にあるとは限りません。あらゆる理由から、合わないと判断する学生もいるのです。だからこそフォローアップが極めて重要です。

 具体的には、見込み志願者をメーリングリストに登録し、メールキャンペーンで追跡するといった施策を実施しています。例えば、この秋は「ディスカバー・ダートマス」と題したZoomイベントを開催します。このプログラムを通して、学生はダートマスのカリキュラムの特徴をより深く知ることができるのです。ここを最初の接点として、コンタクトを続けていきます。

Parsons氏:本学の合否通知の大半は3月に発送され、3月下旬から4月にかけてが合否発表のピークとなります。プリンストンではその時期に「プリンストン・プレビュー」というプログラムを用意し、学生が志望分野の教授陣と交流する機会を提供しています。

 キャンパス全体の学生支援サービスにもつなぎ、支援体制について理解を深めてもらいます。彼・彼女らは数多くの優れた大学の中から選択しようとしているのですから、「なぜプリンストンが自分に合っているのか」を明確に伝えなければなりません。そのため、合格通知直後から、必要な情報を確実に届けることに注力しています。

──お2人の話を伺って、入学審査や受け入れには人間的なつながりが鍵になると感じました。国際教育・入学審査における課題を考えた際、アメリカや日本を含む世界中のあらゆる市場が直面していることは何だと思いますか?

Parsons氏:難しい質問ですね。学生や保護者からよく聞かれるのは「AI対策はどうしているのか」ということです。エッセイや推薦状などの出願書類の作成に、どのようにAIが関わっていて、大学側はどう対策するのか考えなければなりません。

 長期的には、学生が学業やキャリアでAIを効果的に活用するための支援をどうするか。また、予測できない未来に適応する力をどう育むか、といった論点も重要です。こうした議論は学内で真剣に検討されている課題です。

Denning氏:最近出会う学生たちは高等教育の価値に対して懐疑的な見方をしている気がします。

 多くの「大学に懐疑的な学生」や「大学進学が不確かな学生」と関わる中で、彼・彼女らに十分な情報が伝わっていないと感じることも多くあります。だからこそ、アメリカにおけるリベラルアーツ教育や4年間の寮生活について、それらに馴染みのない人々に伝える際には、異なる言語で伝えることが重要なのです。

次のページ
日本の大学のグローバル化、実践と課題

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

 IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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