大人の言語学習、「障壁」は何か
メイヤー氏は自身の言語習得のキャリアについて、日本語で紹介した。
アラスカで生まれた同氏は、15歳の時フランスに留学してフランス語をマスターした後、18歳で来日した。「日本の神戸女学院にきて、ホームステイ先のお母さんと仲良くなり、フランス語を忘れて日本語を話すようになりました。大学でロシア語を勉強してから25年続けてロシアと仕事をして、どんどん日本語を忘れていきました」と、言語を習得しては忘れてきた自身の経緯を話す。
4年前、日本でのホームステイ先に電話をかけたところ一言も日本語でしゃべれなかった。50歳を過ぎて、ひらがな・カタカナを一から勉強し直し始めたという。
その言語を話す環境に住まなければ、言語は習得できないと思っていたが、60歳に近くなった今、アメリカ・シアトルに住みながらも、日本語・フランス語・ロシア語を勉強できているという。そしてそれは、テクノロジーのおかげだと話す。
メイヤー氏は学習者としてだけでなく、オンライン英会話のNEIを設立したエキスパートとして、大人の言語学習のベストプラクティスの探求に深く携わってきた。「今日は皆さんにその知見を共有します」と話し、まずはこんな調査データを示した。
NEIの調査において「英語学習のゴールを達成するために、障壁となっているものは何ですか?」という質問を、英語学習者に行った。回答したのは56%が日本語話者、28%がロシア語話者、10%がトルコ語話者で残りがそのほかの言語話者だ。
結果として、最も多く挙がった障壁は「時間」で41%。次に「最適な学習方法がわからない」が28%と多かった。
メイヤー氏はこの障壁を乗り越えるには「5分10分時間があいたら、すぐに取り組めるアプリケーションがよいのでは」と提起。たしかに、BabbelやDuolingo、mikanやQuizletなど、英語学習者がよく使っているアプリはたくさんある。
NEIでは、「いつどこでこういったアプリを使って学習しているか?」という調査も行った。すると驚いたことに、58%が「家」だと回答したという。34%が通勤中、20%が待ち時間、17%が仕事の合間という結果となり、言語学習にアプリを使っていないと答えたのは18%だった。
また、アプリでの学習時間についても調査したところ、1週間で平均20~30分間使っている学習者が最も多かった。しかし32%は、「好きだが使っていない」と回答。
「これは興味深いと思いました」とメイヤー氏。時間のない中で勉強するには、アプリの利用は一見有効な手段だと思われたが、この結果を見る限り「学習のためにどう時間を使うのかという課題について(アプリだけでは)解決できていない」と指摘した。
続いて2つ目の障壁「最適な学習方法がわからない」という課題について考察する。メイヤー氏自身、かつて日本語を勉強しそして忘れてしまった。でもそれは日本語がどうでもよかったからではないという。
「私は日本語を覚えていたかったので、実際、何年もの間、漢字を忘れないように単語帳を持ち歩いていました。それでもうまくいかなかったのは、その当時の私の人生において意味を持たなかったからなのです」
では、大人が言語を習得したいと思った時、どのように学習するのがスマートなのだろう。ここからメイヤー氏は、言語学習を成功させる秘訣および学習方法を紹介した。