[※1]出典:文部科学省「令和6年度(令和5年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント」(2024年12月26日)
株式会社クジラボ 代表取締役 森實泰司(もりざね だいじ)氏

株式会社リクルートで採用コンサルタント、ITベンチャーで人事責任者経験後、人事コンサルタントとして独立。現在も人事顧問に従事するなど、教員をはじめ数多くの転職者と関わる。2019年に学校法人の事業を承継し私学経営を行うかたわら、2021年に教員のキャリア支援事業を行う株式会社クジラボを創業。ミッションは教育のオープン化。
なぜ今、教員のなり手が減っているのか?
──まず、教員不足が起きている背景について、どう見ていますか。
背景には大きく3つの構造的な要因があります。
1つ目は、人口構造の変化。そもそも労働人口が右肩下がりで減っており、特に若い世代が少ない。これは学校だけの問題ではなく、すべての産業で起きていることです。
2つ目は、教員という職業に対する相対的な魅力度の低下です。近年はSNSなどを通じて「教員の働き方の過酷さ」が可視化され、ネガティブな印象が広まっています。リモートワークやフレックスタイム制度、副業の容認など、働き方の多様化に対応して柔軟な制度を整えている民間企業が増えている中で、相対的に魅力を感じにくくなっている面があると感じます。
そして3つ目が、「新卒一括採用」に依存した構造です。民間企業では、人材不足への対応として、中途採用や異業種からの転職者の受け入れなど多様な人材を確保する仕組みが広がっています。一方で教員採用は、「新卒で教員免許を取得し、そのまま教壇に立つ」というルートが主流であり、社会人経験を経た人が教職にチャレンジする選択肢が見えづらい構造になっているのが実情です。
──新卒採用だけではなく中途採用の仕組みを、もっと整備していく必要があるということですね。
そう思います。例えば、NPO法人Teach For Japan(TFJ)では、教員免許がなくても志のある社会人が教壇に立てるよう、自治体と連携して特別免許状を活用した制度を整えています。選考を経た参加者には事前研修やメンタリングが提供され、2年間、全国の公立学校で教員として働くことができます。
こうした仕組みがあることで、教育に関心のある社会人が、民間での経験を活かして現場に入るルートが拓かれています。
そのうえで僕は、こうした多様な人材が教育に関わる意義はとても大きいと感じています。会社員を経験した人やアスリートを経験した人、あるいはフリーランスのような働き方を経験した人など、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が、専門性を活かしながら子どもたちと向き合う。単なる「人手不足の穴埋め」ではなく、多様な経験を持つ人材が教育に関わることで、学校に新しい風を吹き込んでいるんです。
