大学のブランド構築とコンソーシアムの設立
宮崎大学は1949年創立の国立大学であり、宮崎市の郊外に、5つの学部のほか大学院や研究所等が併設される総合大学である。宮崎大学もほかの国立大学と同様、法人化後は自立・自律した運営や地域に根差した大学づくりが求められており、特色ある大学づくりの一環として取り組んだのがデジタル人材育成である。
宮崎大学では「宮崎県デジタル人財育成コンソーシアム」を立ち上げ、地域企業や自治体を巻き込んで、地域の人材(学生、社会人)に対して人材育成を行っている。デジタル人材育成に関する県単位でのコンソーシアムや協議会といった団体は珍しくないが、単発のイベントを開催する程度で活動が低調な団体が多い中、宮崎のコンソーシアムでは地域を巻き込んで実効的でユニークな活動を展開している。このコンソーシアムは2023年5月に宮崎大学工学部の田村宏樹教授と旭化成が中心となり、宮崎銀行や地元のIT企業、宮崎県が参加して設立された。
「ほかの国立大学では半導体や宇宙など、先端的な特定分野で強みを持ちブランド化していますが、宮崎大学はデジタル教育・AI活用で全国的なブランドを確立したいと考えました。そのころ、たまたまお会いした旭化成の皆さんと意気投合して、コンソーシアムの設立へと一気に話が進みました」と田村教授は言う。
旭化成は宮崎県北部の延岡市が創業地の巨大企業である。現在、本社は東京へ移転したが、県内に大規模な工場を数多く有しており、宮崎経済への影響力は計り知れない。また、同社はデジタル化・DXの分野で先端的な取り組みをしている企業としても有名であり、経済産業省等が主催のDX銘柄に5年連続で選定されている優良企業でもある。その旭化成と組んだことが、本コンソーシアムの成功の秘訣のひとつだと筆者は考える。
ただし、旭化成をはじめ参加企業は、資金提供は行わず、講師派遣や工場見学などの労力やノウハウの提供が中心だという。筆者は参加企業群がスポンサーになっているのだと考えていたが、実際はまったく違っていた。
「この事業は人件費を一切支払わず、会場費や交通費などを除き、現在はほぼボランティアで運営されています」と田村教授。なお、事務局は宮崎大学が担っているという。
本稿では、本コンソーシアムの中心人物である宮崎大学の田村宏樹教授の研究室を訪問してさまざまな話をお伺いしたのでご紹介する。

 
              
               
                          
                           
                          
                           
                          
                           
                          
                           
                          
                           
                          
                           
                          
                           
                          
                           
                          
                           
                          
                           
                          
                           
                              
                               
                              
                               
                              
                               
                  
                   
                      
                       
     
     
     
     
    
