株式会社クジラボ 代表取締役 森實泰司(もりざね だいじ)氏

株式会社リクルートで採用コンサルタント、ITベンチャーで人事責任者経験後、人事コンサルタントとして独立。現在も人事顧問に従事するなど、教員をはじめ数多くの転職者と関わる。2019年に学校法人の事業を承継し私学経営を行うかたわら、2021年に教員のキャリア支援事業を行う株式会社クジラボを創業。ミッションは教育のオープン化。
学校現場における、子育てとキャリアに関するリアルな悩み
──子育てとキャリアの両立について、よくある相談事例を教えてください。
20~30代を中心に、女性教員の方から相談を多く頂きます。相談のあるタイミングは大きく3つです。
まず結婚や出産の手前。これからライフイベントを迎えるにあたり「このまま先生を続けられるのだろうか」と、漠然とした将来の不安を抱いて相談に来られる方がいらっしゃいます。
次に、復帰直前のタイミング。保育園の送迎や生活リズム、職場での役割との折り合いをどうつけるのか、現場の働き方に大きな改善が見えないまま準備を進めざるを得ず、悩みが一層強まります。
そして、いざ復帰してからはその不安が現実になります。時間は足りず、体力は追いつかず、精神的にも消耗してしまう。一番相談が多いのはこのタイミングです。
「時短勤務をしているのに、周囲の目が気になって定時で帰れない」「子育てと仕事の両立で、体力的に限界を感じる」。こんな声をよく聞きます。制度上は時短や非常勤といった選択肢があっても、実際には「この先も続けられるのか」という見通しが持てず、出口の見えない不安に苦しむ先生が多くいるのが現状なのです。中には、復帰後まもなく「やはり続けられない」と離職を決断するケースもあります。
──子育てとの両立について、男性教員からの相談もあるのでしょうか?
女性に比べると数は少ないですが、男性からの相談もあります。多いのは、育休を取りたいけれど取りづらい空気があるという悩みです。制度上は取得可能でも、現場が慢性的な人手不足で、自分が抜けると周囲に大きな負担をかけてしまうという不安が壁になっています。さらに、一部では「育休は女性が取るもの」などの固定的な価値観も残っており、心理的なハードルを高めています。
実際に育休を取得した男性からも「復帰したら結局は元通りの働き方に戻ってしまい、家族との時間が十分に確保できない」といった声が寄せられています。
