運営費交付金の減少など、国立大学法人が置かれる厳しい状況
──まず、人事企画課の業務内容と、DXに取り組む背景を教えてください。
造田大輔氏(以下、造田):人事企画課は、一般企業の人事課と同様に職員の採用や給与決定、ハラスメントの相談対応、就業規則の改正などの業務を担っています。

DXに取り組む背景には、国立大学法人を取り巻く厳しい財政状況があります。平成16年の法人化以降、国からの運営費交付金が毎年減少し続ける一方で、物価高騰や人事院勧告による人件費の上昇が経営を圧迫しています。人件費が大きな割合を占める国立大学法人では、教育や研究に少なからず影響が出始めている状況です。
しかしながら人件費を直接削ることは難しく、職員の数もすでに限界まで削減しています。そこで、業務改善・効率化による超過勤務の削減が最も重要な課題となっており、長年、業務効率化に取り組んできました。ですが、それも限界に達しつつある中で、コロナ禍も契機となり、DXが大きくクローズアップされるようになりました。
──香川大学におけるDX推進の体制には、どのような特徴がありますか。
造田:本学のDX推進研究センターは、学生を中心とした開発集団である「DXラボ」を中心に、大学業務システムの内製開発をしながらDXを推進する取り組みが特徴的です。他大学からの視察等の実績も数多く、DXが進んでいる大学と言っていただいています。特に事務職員に対しては、非情報部門の職員を毎年60名程度「デジタルONEアンバサダー」に任命しています。これによりDX人材を徐々に増やしていき、最終的には全職員がDXに携わることを目指す体制を築いています。
多くの職員が自分の担当業務におけるDXのため、ノーコードでの内製開発を進めており、これまでに250以上の業務効率化ツールが開発されました。学内での横展開も積極的に行われています。こうした全学的なDXの「機運」が高まっていることが、管理部門である人事企画課にAI面接を導入するきっかけとなりました。