2カ月以上かかる職員採用──負担軽減のため、AI面接を導入
──職員採用にAI面接を導入した背景を教えていただけますか。
造田:職員採用は人事企画課にとってメインと言える業務であり、毎年多くの時間を費やしています。常勤職員の数が減る中で、新陳代謝のためにも質の高い人材を採用する必要がありますが、採用に関わる工数と時間は大きな課題でした。
採用活動には、当日の面接そのものに加えて、書類選考やそのほかのさまざまな準備なども含めると2カ月以上かかります。この工数や時間を削減したいという思いが導入の背景にありました。
──数あるAI面接サービスの中で、香川大学ではPeopleXのAI面接を導入されたと伺っています。選定の理由についてお聞かせいただけますか。
篠原正行氏(以下、篠原):全学的なDXの機運の中で、何か新しい取り組みができないかと考えていた際に、偶然AI面接の存在を知り、問い合わせをしました。デモを見た際に、「私たちが求めているものとかなり近かった」ことが大きな決め手です。

また、タイミングも重要でした。夏の大きな新卒採用試験の前に、小規模な中途採用試験の面接があったのです。まずはそこで試してみて、手応えがあれば正式導入することにしました。その試用を経て、私たちのニーズと合致することがわかり、かつ今後の機能拡張にも期待が持てたため、本格的な導入を決定しました。

──人事企画課のDXとして、AI面接以外に導入されたサービスはありますか。
造田:私自身、人事企画課長を拝命した当初は人事経験がほとんどなかったため、業務はほかのメンバーに助けてもらいつつ、効率化を進めることが自分の役割だと考えました。そのひとつとして「AIによる議事録作成支援ソフト」を導入しました。
ハラスメント関連の委員会など、一言一句記録が必要な場での議事録作成は時間がかかっていましたが、AI議事録作成支援ソフトを導入したことで、作成にかかる時間は約半分に削減できました。これは人事企画課主導のもと、ほかの部署にも展開し、活用されています。
ニッチなツールは内製化し、AI面接などの高度な外部サービスに投資
──DXを進める際、デジタルツールに苦手意識がある方の支援に苦労されている教育機関は数多くあると思います。香川大学ではどのような状況ですか。
造田:本学ではデジタルONEアンバサダーの仕組みが非常に効果的に働いており、多くの職員はデジタルツールに対する抵抗感がほぼありません。皆さん新しいデジタルツールをどんどん使いこなしているようです。
DX推進研究センターでは、デジタルONEアンバサダーが開発したツールを表彰したり、アンバサダーが講師となってハンズオンの勉強会を毎月開催したりと、啓発活動を継続的に行っています。他大学の職員の前で本学職員が発表する機会もあり、DXを進めやすい風土醸成が進んでいる証拠だと感じています。
篠原:香川大学がMicrosoftと提携していることも大きく、日々の業務ではTeamsを標準ツールとして使っています。チームを作成し、資料の共同編集をリアルタイムで行うことが「普通」になっているのです。コロナ禍でのオンライン授業への移行をきっかけに、DX推進研究センター主導のもと、「少ない人数で効率よくいいものを作らなければならない」という意識が全職員に浸透していることが、今の状況につながっています。
──新しいシステムを導入する際、執行部の承認を得る上で工夫された点はありますか。
篠原:新しいシステムの導入においては、「効果と費用」のバランスが重要ですが、本学では内製化の推進により「費用がかからない」システムが多いことが第一にあります。
学内で職員が「こうなったらいいのに」と思うものを、各自が業務としてシステム開発に取り組める仕組みがあるため、スモールスタートで始めて効果が出れば、執行部も否定的な要素を持つ必要がありません。大規模かつ高額なシステムを購入する場合とは異なり、内製化や効率化が主軸であるため、承認はスムーズに進みます。
──内製化でコストを抑え、AI面接のような外部サービスを導入する費用に充てるという、「選択と集中」の考え方で進めているのでしょうか。
篠原:はい、まさしくそのとおりです。大学特有のニッチな手続きに関するシステムは内製化して費用を節約し、その浮いた費用を内製では難しい、AI面接などの導入に充てるという、「正しいやり方」ができていると感じています。