精神的に未成熟な若者に、AIはどのような影響を及ぼすのか
──小西先生は精神科医としてトラウマやPTSD(心的外傷後ストレス障害)のケアを専門とされています。精神医学の観点から見て、現在の若者とAIの関係をどうとらえていますか?
大学という場所には、まだ自分の世界観が固まりきっていない若者が集います。精神医学的に見て、思春期から青年期にかけての若者は非常に脆弱な存在です。感情のコントロールが難しく、世界の変化の影響をダイレクトに受けやすい。これは生物学的にも明らかなことです。
そんな不安定な時期にある彼・彼女らの生活に、生成AIという劇的な変化が入り込んできたことの影響は、決して小さくないと考えています。私はAIが社会に浸透することに関して楽観視はしていません。若者がAIとどう関わり、その結果、精神面にどのような影響をもたらすのかを慎重に見守る必要があります。
──若者は大人よりもAIの影響を強く受ける可能性がある、ということですね。
その通りです。加えて、現代の若者は「コロナ禍」という特殊な環境下で対人関係を十分に築けないまま大人になってきました。例えば本学の食堂も、コロナ禍以前の利用状況まで回復していません。以前のように、集まってワイワイと会話しながら食事をする光景が戻ってきていないのです。
学校の授業では従来よりも他者との対話が重視されるようになりましたが、対人関係を学ぶという点では、たくさんの感情のやり取りが発生する授業外の場こそ重要なのです。友人との遊びやクラブ活動、アルバイトなどで体験したことは強く印象に残り、人生で大きな意味を持ちます。
こうした「対人関係のやせ細り」がある中で、AIという「否定せず、常に寄り添ってくれる対話相手」が登場しました。従来は他者とコミュニケーションをとる中で、自分とは違う考えを持つ、さまざまな人がいることを知るチャンスがありましたが、AIによってそのような機会がますます減っていくことを危惧しています。人間関係で傷つくことを恐れる若者にとって、AIは非常に居心地のよい避難所になり得るからです。

