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株式会社ミエタ 代表 村松知明氏

開成高校(2004年)・東京大学工学部(2008年)卒。 在学中、卒業生と在校生が交流する大学公式プログラム「知の創造的摩擦プロジェクト」の創設に携わり運営代表者として2000名規模に育てる。新卒で三菱商事株式会社に入社し、中国やフィリピンでの不動産事業等に8年間従事した後、2016年に株式会社ミエタを創業。
「教える立場」から「伴走者」へ──重要なのは問いかけ
──生徒に対する先生方の関わり方について、探究学習を実践するうえで何かヒントはありますか?
探究学習では生徒自身が問いを立て、自分で考え、行動していくことが求められます。そのため、先生が「知識を教える立場」から「考えを引き出す伴走者」へと役割をシフトさせる必要があります。だからこそ「声かけ」の仕方がとても重要になるんです。
──具体的に、どのような声かけが重要なのでしょうか?
まず大切なのは、評価者としてではなく、伴走者として関心を向けることです。
例えば、生徒が書いた内容に対して、赤丸をつけたり、「いいね!」とつい言いたくなったりしますが、これを多用すると生徒は「正解かどうか」を気にしてしまいます。
代わりに、「なぜこれを問いにしたの?」「もう少し詳しく教えて?」と問いかけを増やし、先生自身が本気で「興味を持っている」姿勢を示すことで、生徒に「自分の考えは価値があるんだ」と感じてもらうことが大切だと思います。
──「上下関係」ではなく「並走する関係性」が大切なのですね。
はい。探究では、先生が指示し過ぎたり、正解・不正解を意識し過ぎたりして授業を進行すると、生徒は「この活動の『正解』は何か」を考えるようになり主体的に動けなくなってしまいます。「どうするかを自分で決めていいんだ」と思えたとき、生徒の思考は動き出します。
──探究の場では、生徒の反応がすぐに見えないこともあるような気がします。
そうですね。無理に発言したり、書いたりといったことを促す必要はありません。探究学習では自分なりの問いを設定したり、考えをまとめたり、必然的に自分と向き合う場面が多くあり、いわゆる教科学習と求められることが異なるためすぐに取り組むのが難しい生徒さんも多いと思います。
「たくさん書ける人が偉い」わけではないので、「途中でもOKだよ」「キーワードだけでも十分」という声かけが、生徒の自己表現のハードルを大きく下げてくれます。
──なかなか探究に関心を示さない生徒もいると思いますが、向き合う際に大切な姿勢はありますか?
一番大切なのは、先生ご自身が探究を楽しむことだと思っています。先生がワクワクしている授業は、生徒も必ずワクワクします。生徒が独り言のように言ったひと言でも、「その視点、面白いね」と返すと、それが参加のきっかけになることもあります。探究学習を、先生と生徒が 「ともに学びをつくる時間」として捉え、大人が面白がることで、安心して探究に加わる生徒もいるかと思います。

