財源確保のため、市長部局と教育委員会が一体となり「教員負担軽減タスクフォース」を設立
──那覇市では教員の精神疾患による休職率が全国平均よりも高い水準にあり、この状況を受けて「教員負担軽減タスクフォース」(以下、タスクフォース)が設立されたと伺っています。設立の経緯についてもう少し詳しく教えていただけますか。
私は2022年12月に副市長に就任し、その後の年明けの議会では「学校の教員が足りない」という問題が大きく取り上げられていました。以前から教員の負担が過重であることは報道等で知られていましたが、いよいよ教員まで足りなくなっているという状況に、私自身が強い危機感を覚えたのが始まりです。
翌2023年度の当初に当時の教育長と議論し、「那覇市の未来を担う子どもたちの豊かな教育のためには、まず教員が働きやすい環境を整える必要がある」との認識を共有し、共に課題へ取り組むことを決めました。そして、2023年5月に市長が記者会見を開き、副市長である私と教育長が共同座長となるタスクフォースの立ち上げを発表しました。
──タスクフォースの最大のねらいは、どのような点にあったのでしょうか。
最大のねらいは、市長部局、すなわち財政当局を持っている私たちが入ることによって、「財源面でしっかりサポートができる」という点にありました。もちろん、これまでも教育委員会では教員の働き方改革に取り組んでいましたが、自主財源がないために予算や人員の面で財政的な制限がありました。そこに市長部局が入ることで、市として「全力で教員を支援する」という強い意志表示にもなり、管理部門も一体となって優先順位を付けながら改革を進めることができるようになりました。
──那覇市で特に教員の方の負担が高まっていた背景について、どのようにとらえていましたか。
沖縄県全体が全国よりも厳しい状況にあり、那覇市においても精神的な疾患による休職者が増えていることは数字として明らかでした。これが那覇市特有の事情かどうかまでは断定していませんが、全国と同様にさまざまな要因によって教員の方々の負担が増えている状況であろうという認識で取り組みを始めました。個別の事情解決にとどまらず、教員全体の負担軽減とメンタルヘルスケアの推進に焦点を当てることとしました。
アンケートで見えてきた「教員の意外な負担」
──具体的な施策を検討する際、教員の方々へアンケートを実施したとのことですが、その目的はどこにあったのでしょうか。
教員の働き方改革については、100人が100通りの意見をお持ちでした。それぞれ理があるものでしたが、一度にすべて対応することはできません。そこで、現場の先生方が「特に負担感が高い」と感じているのは何か、「見える化」するためにアンケートを行い、施策の優先順位付けに役立てました。
──アンケートの結果、上位の項目はどのような内容でしたか。
アンケートでは4つのテーマに分けて、負担感の高い項目を調査しました。
「教員を支える人員の拡充」では、特別支援教育補助員の拡充要望が1位でした。次いで学習支援員、スクールサポートスタッフの拡充要望が続きました。
「保護者・地域への対応の負担」では、保護者からの相談への対応が最も負担が大きく、次いで学校内のPTA活動に関する負担が挙がりました。
「授業や指導」の中で負担に感じていることでは、登校支援や問題行動への対応といった生徒指導が1位、2位が成績の処理、3位が授業の準備でした。
「学校外のイベント・行事に関する負担」で意外だったのは、夜間街頭指導が1位だったことです。これに加え、那覇市のイベントである「旗頭フェスタ」や伝統行事である「那覇ハーリー」への対応も大きな負担として挙げられました。
夜間街頭指導は月に1回程度かつ夜間のみの対応であり、当初はそこまで大きな負担があるとは想定していませんでした。しかし、教員の方々にとっては、業務の合間に時間が取られることが、物理的な時間だけではなく、精神的な負担も含めて、非常に重いものだったということが判明しました。この結果は、アンケートによって初めて判明したもので、施策に反映させることとなりました。

