[※1]京都新聞「滋賀県の若手教員の退職者が急増、最も多い退職理由とは」2024年12月11日
[※2]朝日新聞「東京都の新任教諭、4.9%が1年以内に離職 過去10年で最多」2024年4月24日
株式会社クジラボ 代表取締役 森實泰司(もりざね だいじ)氏

株式会社リクルートで採用コンサルタント、ITベンチャーで人事責任者経験後、人事コンサルタントとして独立。現在も人事顧問に従事するなど、教員をはじめ数多くの転職者として関わる。2019年に学校法人の事業を承継し私学経営を行うかたわら、2021年に教員のキャリア支援事業を行う株式会社クジラボを創業。ミッションは教育のオープン化。
教員を退職される方のリアルとは
──3月末で退職される方は、実際に増えているのでしょうか?
クジラボへ相談に来られる方の中でも、退職を決断される方は増加傾向にあります。特に20代半ばの教員が多く、この層の約5割が退職を決断しています。相談者全体で見ても約3割の方が退職を決断している状況です。
退職後の進路はさまざまですが、私立学校やフリースクールなどの学校関係、EdTech企業や教育関連NPOなど教育に関わる企業に転職をする方が多くなっています。そのほか、まったく異なる業種に転職される方も少なくありません。

──どのような理由で退職を決断されるのでしょうか?
退職理由には、大きく分けて2つのパターンがあります。1つ目は「今のうちに外の世界を見てみたい」「それでも教員がいいと思ったらまた戻りたい」という、比較的ポジティブなものです。特に若手の間では「教員はいつでも戻れるから今のうちにチャレンジしておきたい」という意識が強まっています。2つ目は「このまま続けてもワクワクしない」「ワーク・ライフ・バランスが取れない」「管理職に期待できない」のように、現状に希望を持てずに辞めていくというケースです。
──退職者が増えているのには、どのような背景があると考えていますか?
ネガティブな理由で退職する人の多くは、管理職に期待が持てず、現状の環境が変わる見込みがないと感じています。例えば、20代後半から30代前半の独身の先生が「便利屋」のように扱われることがよくあります。「独身だから自由がきくだろう」と業務を多く振られ、気づけば疲弊してしまうのです。
また、教員は周囲にキャリア相談をしづらい環境にあるのもひとつの要因だと言えます。家族や同僚に相談しても、「辞めるのはもったいない」と言われがちで、結果として誰にも相談できないまま、退職を決断してしまう方が多いのです。