
ハードとソフトをそろえたAI学習環境を構築
石川工業高等専門学校(以下、石川高専)は1965年に開校し、今年創立60周年を迎える。石川県河北郡津幡町に位置し、2024年の能登半島地震では甚大な被害を受け、現在も施設等の修復を続けている。学科は機械工学科、電気工学科、電子情報工学科、環境都市工学科、建築学科のほか、2つの専攻科で構成されている。
同校はこれまでもAI教育には積極的に取り組んでおり、文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(応用基礎)」にも採択された。今回の「AI Career Tech Center」は、石川高専、インテル、内田洋行の三者が連携して進めてきたもので、インテルは機材と教材の導入提案と提供を行い、内田洋行は教室設計やネットワーク構築、運用支援などを担当している。
「AI Career Tech Center」は管理棟4階にあった英語教室を利用し、インテルの最新世代である「Core Ultra 7」を搭載したAI パソコンとモニターが50台導入され、学生はダブルモニターの環境で学習する。教材としては、インテルのAI教育プログラム「AI for Future Workforce」を採用。同社のAI開発ツール「OpenVINO」も各パソコンに搭載されており、実際の開発現場に近い環境で学習できるのが特徴だ。

今後の授業としては、AIリテラシーやPython、ノーコード開発、AIプロトタイピングまでを体系的に学習するほか、授業外では、学校外向けのAI体験授業やミニハッカソン、地域企業との共同研究なども検討しているという。
創立60周年を迎える石川高専の新たな挑戦
開所式では、主催者である石川高専をはじめ、連携企業の代表、そして来賓らがAI Career Tech Centerの開所を祝うとともに、その意義や今後の展望について熱のこもったメッセージを送った。
石川高専校長の富田大志氏は感謝の言葉とともに、同校が実践力のある研究開発型技術者育成を基本理念とし、約9600人の卒業生を輩出してきた歴史を紹介した。1987年に電子情報工学科を設立以来、情報リテラシー教育に注力し、2016年よりサイバーセキュリティ人材育成事業の拠点となっているという。
富田氏は「AI Career Tech Centerを活用し、これからの時代を切り開く高い専門性を持つ人材の育成に取り組むとともに、地元自治体や産業界との連携を強化し、能登半島地震を経験した地域が抱える課題の解決にも貢献していきたい」とした。また、能登半島地震で被害を受けた状況下でも工夫しながら学業や課外活動に励み、「全国高専プログラミングコンテスト」で特別賞を受賞するなどの成果を上げていることを伝え、AI Career Tech Centerが学生の可能性を広げる新たな拠点となることへの期待を語った。

次に、インテル株式会社 代表取締役社長の大野誠氏があいさつを行った。大野氏は「22年前から無償で教員研修プログラム『インテル Teach プログラム』を実施し、これまでに100カ国以上で1500万人の教員を研修してきた」と同社の実績を紹介。日本でも2021年から教育機関や自治体と連携し、AIスキルの普及に取り組んできたこという。
その上で「インテルのビジョンは『AIをすべての人へ』であり、AIを中心とした先端テクノロジーを地域教育、そして産業のあらゆる分野に広げ、豊かな社会を目指すこと」と述べた。さらにAI Career Tech Centerは、インテルが世界に展開する「Intel Digital Readiness」プログラムの一環であり、「AI for Future Workforce」と呼ばれる実践的なAI学習の場として、アジア初の拠点となることを明らかにした。大野氏は「AI Career Tech Centerが新たなAI人材を生み出し、ほかの自治体、学校や企業を刺激する存在になることを願う」と期待を込めた。そして「教育とテクノロジーの融合を通じて地域社会と連携し、未来を担う人材を育成することが、やがて日本全体のデジタル競争力の向上につながると強く確信している」と語った。

続いて、高専を15年ほど担当し高専教育の普及に努めてきた経験を持つ、株式会社内田洋行 高等教育事業部 副事業部長の小林由昭氏が登壇。AI Career Tech Centerのポイントとして、「高性能なインテル製パソコンの導入」「AI パソコンや持ち込みのパソコンも映せるモニターの設置」「グループワークに適したキャスター付き椅子の導入」の3点を挙げ、2画面による学習効果の高い作業のほか、活発なグループワークやディスカッションが可能になると期待を込めた。
