登壇者
- 山梨大学 大学院 総合研究部 教育学域 教育学系 准教授 稲垣俊介氏
- 東京都立小平高等学校 指導教諭 小松一智氏
- 愛知県立旭丘高等学校 教諭 井手広康氏
- 特定非営利活動法人みんなのコード 未来の学び探究部 研究員 兼 講師 永野直氏(元千葉県情報科教員)
モデレーター
- 特定非営利活動法人みんなのコード 政策提言部/未来の学び探究部 部長 田嶋美由紀氏(元文部科学省官僚)

第1問は全4分野から社会的背景と結びつけた問題
まずは共通テストの出題内容について、大きな設問ごとに各登壇者が順に解説した。第1問を解説した稲垣氏は「4つの分野を横断する力が求められ、社会課題と情報技術を関連づけた事例が満載だった」とコメントした。

各問で取り上げられたテーマを見ると、一見暗記系の知識問題かのような印象を受けるかもしれないが、出題の方法は用語の暗記が求められるようなものではなく、その技術が必要な社会的背景を意識させるような作りになっているものが多かった。
この傾向を踏まえ、稲垣氏は「実社会の文脈で学ぶことが大切で、授業では実演をすること、子どもたちに体験させることが大切なのではないか」と提案した。
第2問は身近な情報システムとシミュレーション
第2問は情報システムとシミュレーションに関する内容で、情報システムはPOSシステムとネットショッピング、シミュレーションはおつりのシミュレーションがテーマで、第1問同様に実社会を想起させる内容だった。

解説をした小松氏は、普段何気なく見ているレシートに記載された情報や、問題文をもとにした机上でのシミュレーション、シミュレーション結果のグラフなどについて、「しっかりと読み解くことができれば正解にたどり着けるような問題になっていたのではないか」とコメントした。読み解くためには、情報システムへの関心や基礎知識、データベースを触った経験が助けになるような問題も含まれていた。
第3問は高校生の身近な課題をプログラミングで解決
第3問はプログラミング。解説した永野氏は「全体の半分はプログラムの手順の理解に関する設問で、文章の説明がしっかり読めれば解ける問題だった」と指摘。残りの半分が、その手順をプログラムにした穴埋めの問題で、各配列や変数の役割を把握しつつ二重ループと条件分岐のプログラムの流れが理解できているかどうかが問われた。

プログラムの難易度については、「複雑な数的な処理や複雑なプログラムというよりも日常生活と関連して実感できるもの」であり、今後もその傾向が続くのではないかと見通した。
なお、配列の添字が0ではなく1から始まっていたため、Pythonなどのプログラミング言語で実習した生徒には戸惑いがあったかもしれないが、「共通テスト用プログラム表記」で記述される入試問題として「なるべくプログラムをシンプルにするために考えたことだろう」と永野氏はコメント。「プログラムの動きさえ理解していればそれほど大きな違いはない」ので、生徒が慣れているプログラミング言語と表記ルールが異なる可能性があることを今後も伝えるよう勧めた。
第4問はオープンデータを使ったデータの読み解き
第4問はデータの活用。解説した井手氏は「『実際のオープンデータを使って探究的な学びを進めていきましょう』という、強いメッセージを感じた」とコメントした。

例えば散布図から読み取れることを答える設問で、相関関係はあっても因果関係はないということを読み取れたかどうかは、「授業で、相関を出す際に因果関係があるかどうかを考察する経験をしていたかどうかが左右したのではないか」と指摘した。単に与えられたデータから散布図を作ればよいのではなく、そこから読み取れる社会的背景に興味を持って分析をするような授業作りが求められる。
とは言え、データの活用の単元は教科書で割り当てられているページ数が多いわけではなく、限られた授業時数では十分な時間をかけられない現実もある。井手氏は「データの活用については、どのような授業をすればよいか、みなさん悩んでいるのでは」と共感した上で、今回見えた傾向を今後の授業作りに生かすように呼びかけた。