- イベントレポート前編「「生成AI時代の基礎学力」とは何か? 学芸大附属小金井小・鈴木教諭が、学びのあり方の再考を提言」
AIの時代における「情報リテラシー教育のあり方」をパネルディスカッションで議論
パネルディスカッションでは鈴木教諭の基調講演の内容を踏まえ、ICTや生成AIを活用した教育実践の現状と課題について議論が交わされた。パネリストとして鈴木教諭と下村氏のほか、鳥取大学の学生で来年度より英語科の教員となる梅野萌恵さんが登壇。モデレーターは今度氏が務めた。

今度氏は冒頭、鈴木教諭による基調講演の感想を登壇者たちに求めた。
下村氏は「本当に感動した」と絶賛。鈴木教諭が提唱した新しい学力観である「読(どく)・書(しょ)・問(もん)」について全面的に支持を表明した。そのうえで「やはり『問』が非常に大事であり、自分のペースで『考える』過程に取り組み、対等な立場で意見を交わせる環境が整うことは非常に有益」と述べた。

下村氏は続いて、パネルディスカッションにおける「自身の立ち位置」として、自らの授業の方針を示した以下のスライドを提示した。

下村氏と鈴木教諭は同じ「想像力のスイッチを入れよう」の題材を用いているが、下村氏はあえてアナログを多用しているといい、「全員が同じ到達点にたどり着いてほしい」と考えているという。加えて、「網羅的」に同じ内容を教えること、また鈴木教諭の授業スタイルが「AIで教える」というステップであるならば、自身は「AIについて触れる以前に、非常に速いスピードで情報が飛び交い、AIによってさらにそれが加速する中で『AIの前に教えるべきこと』を大事にしている」と整理した。
さらに下村氏は「この手の先端技術が教育現場に入ってくる際には、当然『慎重派』の先生も現れる。それを『推進派』の先生は過剰な心配だと感じる。ここを乗り越えていかなければいけない」としたうえで、「私は今日、あえて慎重派の立場に寄って考える。ただし、『危ないからやめよう』ではなく『危ないからこうしよう』と前向きに話していく」と宣言した。
続いて学生代表の梅野さんは、鈴木教諭の講演について「印象的だったのは(同教諭がメッセージとして述べた)『想像力で壁を破り、大きな景色を眺めてほしい』という言葉。そのように思考できる子どもたちをいかに育成するか、熟考しなければならないし、教員として自分の思考も広げていく必要がある」と語った。そして、これから学校現場で子どもたちに向き合うにあたって、子どもたちの現状をうまく捉え、自身が試行錯誤していくことの重要性を再認識していた。

今度氏は「AIに限らず『どのような問いを投げかけていくのかが大事』という、根源的な課題を感じた。また『AIに対していかに批判的な目を養い、情報の真偽を見極めていくか』といった観点も大事で、これから必要なリテラシーになるのでは」と指摘。これが次の議題の引き金となった。
