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イベントレポート(STEAM教育)

ジェンダーバイアスを超えて好きな道を選ぼう! 女子小中学生向けワークショップでスプツニ子!氏が講演

「2024 MIT STEAMワークショップ@東工大」レポート

 マサチューセッツ工科大学(MIT)の日本の同窓会組織である日本MIT会が8月4日、女子小中学生を対象とした「STEAMワークショップ」を開催した。昨年からSTEAM領域のジェンダーギャップ解消を目指し、女子限定で行われている大規模なワークショップで、会場の東工大蔵前会館には57名の小学5年生から中学1年生の参加者が集まった。ワークショップとともにSTEAM分野で活躍する専門家の講演も行われ、メインスピーカーとしてアーティストのスプツニ子!氏が登壇した。子どもたちと保護者に強い印象を残した、その講演の内容を中心にレポートする。

2つのワークショップに楽しく挑戦

 同イベントはMITの学生インターンを日本に派遣するMIT-Japan Programとの共同開催で、現役のMIT生やMITの卒業生がファシリテーターとして多数参加している。子どもたちは午前は2人組で「DNAの抽出実験」、お昼をはさみ午後はグループで「エッグドロップ」のワークショップに取り組んだ。

 DNAの抽出実験では、正しい手順で実験をすることが求められるのではない。エンジニアの考え方のプロセスが重視されており、1回目は少ない情報を手がかりに仮説を立てて実験。そして2回目は、正解はひとつではないという前提の上で、より多くDNAが抽出できる手順をファシリテーターから学び、同じ実験に挑戦した。初対面のペアが実験の過程で次第にコミュニケーションを深めていく姿が印象的だ。

ファシリテーターのサポートを受けつつ、2人1組のペアでDNAの抽出実験に取り組む ファシリテーターのサポートを受けつつ、2人1組のペアでDNAの抽出実験に取り組む
ファシリテーターのサポートを受けつつ、2人1組のペアでDNAの抽出実験に取り組む

 エッグドロップとは、卵を高いところから投げ落としても割れない装置を作るチャレンジで、MITで伝統的に行われているものだ。与えられた材料だけを使い、どうすれば中に入れた卵が割れないかを考え、グループでアイデアをぶつけ合ってひとつの装置を作りあげる。最後は屋外で全員が見守る中、落下テストを行った。卵が割れてしまったとしても、重要なのは結果よりもプロセスで、割れたグループからはその原因を分析する感想も上がった。

中の卵が割れないような装置を作り、実際に落下テストを行う 中の卵が割れないような装置を作り、実際に落下テストを行う
中の卵が割れないような装置を作り、実際に落下テストを行う

バイアスを壊して好きな道に進もう!

 子どもたちがSTEAM分野で活躍する女性のリアルな姿を知ることができるように、ワークショップ前にはキックオフトークが行われ、アーティストで株式会社Cradle代表取締役社長のスプツニ子!氏が登壇した。

アーティスト/株式会社Cradle 代表取締役社長 スプツニ子!氏
アーティスト/株式会社Cradle 代表取締役社長 スプツニ子!氏

 スプツニ子!氏は、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンで数学とコンピューターサイエンスを学び、大学院は一転、美術系のロイヤル・カレッジ・オブ・アートに進んだ。テクノロジーが創る多様な未来を表現し、問題提起をするような作品を創り出す中、2010年に発表した作品が世界的に大きな注目を集め、その後MITメディアラボの助教に就任。さらに2017年からは日本で東京大学大学院の特任准教授を経て、現在は東京藝術大学美術学部デザイン科の准教授を務めている。また、自ら起業して株式会社Cradleの経営も行うなど、多方面で活躍中だ。STEM分野に女性が少ないことなどジェンダーギャップにも早くから問題意識を持ち、それは自らの作品や会社の事業内容などにも表れている。

 スプツニ子!氏は子どもたちに向けて、数学の研究者である両親の影響もあって子どものころから数学やプログラミングが大好きだったことや、学生時代にとても楽しく学んでいたことなどを飾らない言葉で伝え、学び方や進む道には多様な選択肢があり、可能性が開けていることを伝えた。そしてジェンダーバイアスについては次のように語りかけた。

 「私は子どものころ『女の子なのに数学やロボットが好きなの?』とさんざん言われて、とても嫌でした。日本にはまだ理系は男の子の方が向いているとか、男の子はロジカルで女の子は感情的だというような間違ったバイアスが根強く残っています。今日はこのワークショップを通してこのバイアスを思い切り壊してほしいと思います」

 さらにDNA抽出のワークショップに関連して、自身の作品の中で遺伝子編集の技術を使ったプロジェクトを紹介し、子どもたちはその世界観に驚きを感じている様子だった。

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保護者の情報をアップデート! バイアスの影響力は大きい

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この記事の著者

狩野 さやか(カノウ サヤカ)

 株式会社Studio947のデザイナー、ライター。ウェブサイトやアプリのデザイン・制作、技術書籍の執筆に携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、子ども向けプログラミングやICT教育について情報発信している。著書に『見た目にこだわる Jimdo入門』(...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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