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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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イベントレポート(ICT活用)

文部科学省 武藤久慶氏が語る、GIGAスクール構想第2期の推進に必要な「3つの観点」

2024年度「かごしま 未来の学びをつくる会」講演「これからの時代に求められる学びと教育DX~次期教育課程も念頭にGIGAを深化させたい~」レポート

 日本全国の子どもたちと教員が1人1台のコンピューターを活用する「GIGAスクール構想」が次のフェーズ(2nd GIGA)を迎えようとしている。8月9日に鹿児島市で開催された「かごしま 未来の学びをつくる会」では、文部科学省 初等中等教育局 教育課程課長の武藤久慶氏が、生成AIの台頭に代表される急激な社会変化の下で、GIGAスクール構想をいかに「深化」させるべきかを、90分間の基調講演で熱弁した。本稿ではその基調講演「これからの時代に求められる学びと教育DX」の要旨として、2nd GIGAを成功させていくために意識すべきポイントを3つの観点に絞ってレポートする。

【観点1】外的トレンドを把握する

 学校教育法等に基づき、全国どの地域でも一定水準の教育を確保するための基準として定められ、おおむね10年に一度改訂されている「学習指導要領」。基調講演の冒頭、武藤氏はこの学習指導要領の前文で「一人一人の児童(生徒)が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる」と記載されていることを紹介した。

冒頭で紹介された学習指導要領(平成29、30年改訂)の前文
冒頭で紹介された学習指導要領(平成29、30年改訂)の前文

 この前文について、武藤氏は「なぜ学級の中の目立った2、3人の子ではなく、『一人一人』の児童生徒と書いてあるのか。なぜ単なる社会の構成員ではなく、持続可能な社会の『創り手』を育てると書かれているのか。その背景を深掘りするところからスタートしたい」として、背後にある「教育改革の背景 6つの外的トレンド」を提示した。なお、講演では多数のエビデンスや資料とともに以下の内容が説明されたが、本稿では各トレンドの概要に絞って記載する。

1.人口減少・少子高齢化

 2050年に5割を切る生産年齢人口が、残り5割の年少者と高齢者を支えるため、一人ひとりの子どもの可能性を開花させることが必要。一方で、核家族化の進行や地域と家庭の結びつきが希薄になったことにより、子どもと関わる大人が減る中、他者と協働する力を育むために学校が果たすべき役割が大きくなっている。これらの課題解決には意図的・計画的な取り組みが必要で、そのひとつの手段がICTやクラウドの活用である。

2.グローバル化

 コロナ禍後、在留外国人の人口は過去最高となり、急増する訪日外国人(インバウンド)を政府はさらに増やすべく計画している。加えて、日本人の海外出国者も急回復中である。このようなグローバル化の進行により、2067年には人口の10.2%が外国人に、労働環境に限定すれば2048年には1割が外国人という環境となり、現在学校で学んでいる児童生徒は、自分たちと異なる文化や宗教、価値観を持つ多様な上司や部下、同僚と一緒に働くことが想定される。

3.多様性&包摂の重視

 SDGsの目標4「質の高い教育をすべての子どもたちに」が国連で全会一致で採択されている。目標として掲げたということは、裏を返せば十分に実現していないからである。例えば、不登校傾向の子、支援が必要な子、外国にルーツを持つ子など、さまざまな背景がある子どもたちに質の高い教育を提供していく必要がある。

 なお、学習面や行動面で著しい困難がある子どもは日本の小中学校では8.8%だが、これが大学になると0.32%まで減少する。単純比較はできないが、米国ではADDやADHDの大学生が15%も在籍しており、この数字は日本の教育の中で、現状こぼれ落ちている子どもがいることを示唆している。こうした課題の解決と理想の実現に向けて有効なツールとなるのが、GIGAスクール構想やデジタルの力である。

4.デジタル化(Society 5.0)

 仮想空間と現実を高度に融合させ、その中に人間中心の社会を作る「Society 5.0」の実現に向けて官民一体の取り組みが進められており、社会のあらゆる場面にデジタルやAI、ロボティクスが行き渡る。こうした社会を発展させる上では、デジタルのよき創り手やよき使い手を意識的に育てていく必要がある。

 また、人間の仕事の大枠である「意思決定」と「作業」のうち、後者はAIが代替できる時代となる可能性がある。やりたいことを持たなければAIは使えない。好きを伸ばすこと、やりたいことを突き詰めることなども大事になる。自己決定とその結果責任の意識が重要だと言え、学びの過程における自己決定や自己調整もより重要となる。

5.変化の激しい不確実性の時代

「機械など、有形資産の陳腐化が進むスピードは年10%程度だが、人的資本の価値は年40%ものペースで失われる」との推計もある。あらゆる変化が加速していく中、それを上回るスピードで人的投資をしなければ、技術や知識がいずれ陳腐化するリスクがある。それを念頭に、激しい変化を見据えた教育・指導をしていく必要がある。

6.人生100年時代

 激しく変化する時代の中、健康寿命が長くなる。中途採用者の割合は過去最高となる約半数に達しており、終身雇用はもはや崩れつつある。子どもたちが社会に出るころには複数回の転職は当たり前で、その度に新しい知識・体験を体得していく必要がある。「生涯にわたって学び続ける」「先生がいなくても学ぶ経験や学べるスキル」が重要となる。

 これら6つの外的変化を踏まえ、武藤氏は教育課程課長として次のように述べる。

 「何を学ぶか、つまりコンテンツはとても大事だが、激しい変化の中で10年、15年経てば陳腐化する面もある。学校を出たあと、入試を終えたあとに子どもたちに残る力が大事という視点で、現行学習指導要領ではコンピテンシー、つまり『何ができるようになるか』を重視した。それを本気で実現していくための道具立てとして、どのように学ぶか、つまり『学習過程・ラーニングプロセス』も見直そうということになった。

 この大きな理念や設計が古びたとは思わないが、当時想定されていた社会変化は想定をはるかに上回るペースで進んでいる。その象徴が生成AI。こうした中で、次の学習指導要領を作るタイミングを迎えている」

6つの外的変化に対応するための指導要領の理念と構造
6つの外的変化に対応するための指導要領の理念と構造

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【観点2】顕在化した教育課題を把握する

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この記事の著者

野本 竜哉(EduOps研究所 代表)(ノモト タツヤ)

 情報工学修士。高校生時代に自身が1人1台の端末環境で学んだ経験を世に広げるべく、通信企業の学校SE、教育企業の管理職、教育系システム会社の執行役員を歴任し、一貫して教育×ICT領域の事業に従事。2024年8月に独立し「技術をやさしく伝える」をモットーとした教育現場の取材・執筆・情報発信活動の傍ら、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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