- サムネイル提供:Atelier Funipo
教育の「水×油」に挑戦する5人のトークセッション
Microsoft Education Day 2023のオープニングを飾ったトークセッションは、「教育の水と油を混ぜてみたら/教育×ゲーム・お菓子・SNSの可能性」と題して、ゲームや知育菓子、SNSなど、これまでの学校現場では比較的タブー視されてきた題材を積極的に授業に取り入れ、実践してきた5人の教員が、それぞれの取り組みとその教育的効果、課題などを語った。
立命館小学校 教諭 正頭英和氏
「エデュテインメント(エンターテインメントと教育の融合)」を実践している正頭氏。2016年から、エンターテインメントを教育化する取り組みとして、「教育版マインクラフト」を活用した授業を実践し、「教育界のノーベル賞」と言われる「Global Teacher Prize 2019」のトップ10ファイナリストに選出された。2022年からは、コナミの人気ゲーム「桃太郎電鉄 教育版」の教育版のプロデュースに携わり、同教材は現在、無償版として学校に提供されている。
正頭氏は、「日本の子どもたちは満たされ過ぎていて困った経験が不足し、1つのことをがんばろうという意欲が生まれにくい」と指摘。その上で「エンターテインメントを切り口として興味を持つことにつなげられる。現在はゲームの定義をひとくくりにし過ぎているが、ジャンルを深掘りしていくことで、学びをさらにアップデートしていける」と話した。
埼玉県立本庄特別支援学校 教諭 関口あさか氏
有志の教員によるコミュニティ「MIEE Talks@Admin.」の代表として、学校外でも活躍する関口氏は、「お菓子×教育」をテーマに、クラシエの知育菓子「ねるねるねるね」や「ねりキャンワールド」を使った取り組みを、特別支援学校や幼稚園、小学校で実践している。お菓子を題材にしたのは、「自分で作るという過程を経験しやすい」ことと「子どもはみんなお菓子が好き」という2つの理由からだ。
取り組みの結果、「普段は飽きてしまう子が集中したり、学習障害のある子が自分で文章を組み立てて長い物語を作ったりするなど、学習に後ろ向きだった子が前向きに取り組む姿を見られた。意欲が上がり、学びの質の高さを実感できた」という。
佐賀県多久市教育委員会 ICT支援員 福島学氏
ICT活用の先進自治体である多久市教育委員会の福島氏は、ICT支援員の視点から学校現場におけるICT実践を語った。多久市では、小学1年生から「Microsoft Teams」を活用し、学年に応じたさまざまなICT教材を採用しているという。子どもたちに人気の『うんこドリル』シリーズのほか、計算学習ゲーム「アリスメティックマスターズ」「桃太郎電鉄 教育版」などを用意し、休み時間や家庭での持ち帰り学習といった際に開放している。
こうした教材で子どもたちが自主的に学ぶ姿が、先生たちの活用にもつながっていったという。
静岡県立掛川西高等学校 教諭(当時)吉川牧人氏
吉川氏は「掛川西高等学校が掲げる主体性、協働性、創造性、自己有用感という、4つの資質能力を育てるために、SNSの活用をあらゆる教育活動に落とし込んでいる」として、実践を紹介した。
主体性・創造性を目的に「歴史上の人物がTwitterを使うとどうなるか」をテーマとした授業を行ったほか、生徒が学校の公式ブログを「note」で書き、発信しているという。
これらの取り組みを踏まえて、吉川氏は「学校や教育の現場はSNSでの発信をただ怖がるのでなく、資質能力を育てることに基づいて正しく発信するトレーニングをすることで、完全な教育活動になり得る」とした。
青山学院中等部 講師 安藤昇氏
560本以上の動画を配信する「GIGAch」のYouTuberとしても活躍する安藤氏は、幅広くICTを活用し、授業に取り入れている先駆者の1人だ。「遊びが好き」と自称し、「遊びも極めれば、将来の仕事につながる」と自分の経歴を紹介した。
セミナーでは、その場で「ChatGPT」で生成したプログラムを使ったゲームを披露し、会場からは感嘆の声が上がった。
大学附属校で指導を続けてきた安藤氏は、「大学というゴールを達成した生徒は、勉強よりアニメやゲームに興味があることから、授業に取り入れていった」と、きっかけを語った。