ICT支援員が「できること」と「できないこと」
五十嵐晶子氏は、神奈川県を中心とした小中高校で自らもICT支援員を務めてきた経験を持つ。2020年3月に、ICT支援員の導入コンサルティングと育成を専門とする合同会社かんがえるを創業。現在は、全国の自治体や支援員事業者に向けた研修などを行う一方、YouTube「かんがえるチャンネル」でICT支援員に関する情報を発信している。
最初に、五十嵐氏はGIGAスクール構想により爆発的に増えたというICT支援員の現状から話をスタートした。現在、学校現場で働いているICT支援員や事業者の8割は、GIGAスクール構想の開始前後から始めているケースが多く、その業務内容は学校や自治体によってかなり異なっているという。
五十嵐氏は「ICT支援員は、あくまで授業と校務のICT活用を先生がスムーズに行うために支援する存在であり、先生ではない」ことを話し、その上で「講師や先生の代行ではなく支援員として雇用されているので、たとえ教員免許があっても授業を行ってよいわけではありません」と説明した。
次に「GIGAスクール構想によって変わりつつあるが、基本的に守ってほしい」こととして、ICT支援員が通常行うべきではない業務の4例を解説した。
1.児童生徒への直接的指導を行わない
先生立ち会いのもと、T2(授業支援者)として操作の解説などを「生きた動画教材」として説明代行することは可能。
2.ICT機器の物理的な修理を行わない
学校のICT機器には、それぞれ仕様や保証があるため、勝手に修理を行うと保証が受けられない場合がある。
3.仕様に影響する設定変更を独断で行わない
アプリや教材については設定なども仕様が決まっているため、独断での変更は不可。
4.個人情報を1人で取り扱わない
派遣されている事業者から「ICT支援員は個人情報は扱わないこと」と、あらかじめ取り決めされているケースも多い。
では、ICT支援員が行えるのはどのような業務なのか。それは以下の4カテゴリーに分けられるという。
1.授業支援
準備から授業中、授業後まで、さまざまなサポートが存在する。全国のICT支援員が請け負っている業務は自治体や学校によって異なるが、上図に記載されている範囲であれば問題ないため「こんなこともできるかもしれない」というヒントにしてほしい。
2.校務支援
「広報支援のひとつである、学校ホームページの支援は著作権や肖像権の意識が必要なため、意外と難しい」という。また、最近はGoogleフォームなどを使ったアンケートの集計支援も増えている。
3.環境整備支援
GIGAスクール構想において、もっとも肝になる部分。「2020年から整備は強化されつつありますが、やはり進んでいない現場もあるため、注目してください」と五十嵐氏。
4.校内研修
最近はプログラミングに関する研修も増えている。メーカーの研修よりも少人数で実施可能で、先生が普段使っている環境で気軽に質問することができるのが、ICT支援員による研修ならではのポイントだ。
なお、ここに挙げた4カテゴリー以外にも、端末のちょっとしたトラブルやアプリ操作など、現場ではさまざまなサポートが生じる。「時代に合わせて支援の内容もだんだん変わってきていることを知ってください。トラブルだけでなく、先生が『うまくできた』ことを話せるようなコミュニケーションを取れるようになったら、先生を笑顔にするICT支援員の第一歩です」と五十嵐氏は伝えた。