高校の「情報」担当教員の65%が授業へ不安を感じている
永野氏は2021年よりみんなのコードの主任講師として、全国の自治体や学校で情報教育やICT活用の研修を行っている。これまで、25年間の公立高等学校での情報科教員や、千葉県総合教育センターの指導主事、「情報」の新学習指導要領の作成に携わるなどのキャリアを持つ。
同氏はまず、2022年度から大きく変わった「情報I」の解説から講演をスタートした。「ちまたでは『高校で情報が必修化された』と言われているが、2003年から『情報』はすでに必履修となっている。2022年度からは必修科目にプログラミングやデータ活用が含まれたため、これまでプログラミングの経験がなかった教員も授業でプログラミングを扱うことになった」と、現状を伝えた。
実際、永野氏が全国の教員に向けてアンケートや聞き取り調査を行ったところ、情報教育においてもっとも不安に感じているのがプログラミングで、約半数の教員はプログラミングを授業で扱った経験がないという。さらに、高度化した「情報I」の内容に対する不安も大きい。
「このほかにも、授業時間や教材研究の時間が足りないだけでなく、そもそも担当者がいない、足りないなどの問題がある。さらに、大学入学共通テストに対応できるのかといった不安もある」と、永野氏は話す。
そこで、みんなのコードでは、プログラミング言語「Python」を使ったオンライン教材「プログル情報」を無償で提供するほか、全国の教育委員会に対して研修などを行うことで、情報科教員への支援を行っている。その結果、プログラミングに対して大きな不安を抱いていた教員も、授業への自信が持てるようになったという。
情報教育は「問題発見・解決能力」を養うもの
永野氏は「文部科学省から示されている『情報』の考え方は、一言で表すと『問題発見・解決能力を養う』ことだ」と説明。その上で「『情報』では、プログラミングやシミュレーション、データ活用、情報デザインなどを世の中のさまざまな事象に適用し、問題解決を図る。問題が急速に変化していく『現代』に対し、サイクル的に物事を捉え、考え続けていくことが『情報』のねらいであり目標である」と解説した。
そして「人口減少によって予想がつかない社会が訪れる未来では、問題解決能力が必要とされる。今後、新たに生じていく問題に対応するために、プログラミングや『情報』で学んだ内容を活用することで、より良い生き方、働き方につなげていくことができる。そのためには高校在学中に限らず、ずっと学び続けていなければいけない」と、参加者に伝えた。
さらに、永野氏はGoogleが公開している機械学習を活用した農家の動画を紹介。「『情報』はプログラマーといった一部の職業だけのものではない。複雑化・多様化した現代においては、どのような職業においてもテクノロジーを使って問題を解決することが非常に重要」と解説し、教科「情報」の重要性を改めて強調した。