子どもたちに見られた変化をアンケート結果から考察
続いては、カタリバの研究チームに所属する金子楓氏から、room-Kの効果を数値的に把握・裏付けするために行ってきた半年ごとのアンケートの結果が紹介された。アンケートは、入会時に1回目、その後半年ごとに2回目、3回目……と実施し回答を得ている。1、2回目は50%、3回目が30%の回答率ながら、room-K利用者の変化を把握する重要なデータとなっている。
子どもを対象としたアンケートは大きく5つのカテゴリで編成されており、1つ目は「心のエネルギー」として、学術研究で使用される心理尺度を用いて自尊感情などの調査を実施。そのほか、ICTスキルやソーシャルサポート、生活・体調面、学習意欲に関する調査も行われている。また、保護者についても6か月ごとに「子どもへの関わり方」「子どもの状況」「保護者支援」に関するアンケートに加えて、初回には困り感に関して初期調査を実施している。
今回は、子どもの回答に基づき、room-Kを利用して半年間でどのような変化があるのか分析が行われた。その結果、心のエネルギーの項目において「落ち込んでいる」「頭が痛い」などのストレス反応のポイントは下がり、「私は自分に満足している」「私は自分に対して、前向きの態度をとっている」といった自尊感情は高くなった。この結果は分析の性質上、room-Kのみの効果とは断定することができないため、スコアの変化が大きい子どもについて質的に分析を行った。
その結果、心のエネルギーの変化が大きい子どもは週1回、安定して作戦会議に参加できており、メンターと作品づくりや調べ学習など、協同活動をしていることがわかった。また学習意欲の変化が大きい子どもは、作戦会議で学習ツールを使用していることもわかった。room-Kのみの効果については、さらなる検証を行っていくことが今後の展望となる。
また、作戦会議が子どもの変化に影響を与えている可能性があるため、その出席率と心のエネルギーの関係を分析したところ、最初の半年間の出席率が高いほど無気力のポイントが下がることもわかった。この結果から「どこにもつながっていない子ども」が何らかの形でつながりを獲得することにより、気力の回復につながっていることが伺える。