[※]出典:文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」
メタバースを活用したオンライン不登校支援「room-K」
カタリバは2001年の設立以来、教育支援センターの運営や不登校児童生徒へのオンライン支援、学校内における別室学習支援などを実施してきた。2021年にはメタバースを活用したオンライン不登校支援プログラム「room-K」を立ち上げ、「何らかの事情や背景により学校で学ぶことが難しい小中学生に対し、学ぶ意欲と自信を取り戻してもらうこと」を目指し、子どもたちの支援に取り組んでいる。2022年からは自治体との連携実証を本格的にスタートし、包括的な支援のあり方を模索中だ。
同法人の萬代(まんだい)奈保子氏は、「公的なリソースの不足といった地域的な要因や、ひとり親家庭などによる経済的な要因、身体発達特性などの要因、そのほかさまざまな事情や背景によって、学びの機会やつながりを失っている子どもたちがいる。不登校は出席日数のみでその状態を測ることは難しく、本人の心のエネルギー状態、保護者の状況、支援する場所や人にアクセスできるかどうかなど、さまざまなグラデーションがある」と語る。
room-Kではオンラインを軸にした支援に取り組んでいるが、リアルとオンライン双方にそれぞれ強みと役割がある。room-Kでは個別性を尊重するアプローチによって「心のエネルギー」を蓄えることを目指す。その後はオンラインにとどまらず、子どもの気持ちや主体性を重んじながら、リアル支援との併用につなげることを目指しているという。
特に自治体からroom-Kへ期待されているのが、学校とほぼ接点がなく引きこもり傾向にある子どもや、教育支援センターに登録しながらもつながれない子どもに対して、オンライン上でアプローチすることだ。居場所やプログラムを用意するだけでなく、自治体との連携による誘い出しや丁寧な個別伴走があってこそ、初めて支援につながることができる。中には福祉や医療、心理的な支援の介入が必要と思われるケースもあり、その場合は心理士などの専門家に助言を求めたり、リアル支援者と連携したりする機会を設けている。
こうした支援によってオンライン上で英気を養った後は、学校や教育支援センターと協力し、子どもの状況や希望に応じた「次の一歩」につなげていくという。
萬代氏は「目の前の子どもたちに真摯に向き合うことは大前提。そのうえで、事業が目指すあり方や考え方、また、半年ごとのアンケート調査や支援の定量的なモニタリングなどの考察に基づき、子どもたちの実態やオンライン支援の可能性を社会に伝えていきたい。それによって、従来の価値観や行動の変容に寄与できたら」と力強く語った。