room-Kを活用した支援の実際とは?
それでは実際にroom-Kではどのような支援が行われているのか、支援チーム責任者である阿久津遊氏から紹介された。まず特徴的なのは「保護者と子どもへの個別伴走」と「集団型プログラム」の2軸で支援が行われていることだろう。伴走スタッフは2名のチーム制で、1人は「支援計画コーディネーター」として支援計画を作成し、保護者面談や学校など外部機関との連携を行うなど、支援をリードする。そしてもう1人は、支援計画に基づきながら、週1回の作戦会議と呼ばれる個別面談を軸に子どものチャレンジに伴走する「メンター」だ。
room-Kでの過ごし方は子どもによって異なり、大まかに3ステップが用意されている。まず第1ステップでは、おしゃべりやゲームを通じてコミュニケーションを図り、「安心安全な場所」になることが目指される。子どもによっては数か月や1年以上かかることも少なくない。第2ステップでは一緒にチャレンジすることを目的とし、メンターと一緒に集団プログラムの見学に行ったり、個別面談でモノづくりや調べ学習などを行ったりと、子どもの希望や気持ちを大切にしながらさまざまなことに取り組む。そして第3ステップでは、そうしたチャレンジの習慣化や継続を目的として、時間割作成や目標設定、振り返りなどのサポートを行う。
阿久津氏は「一見シンプルに見えるが、安心安全な人間関係を育むことも、チャレンジを見つけることも決して簡単ではない。時間をかけて、この3ステップを子どもと共に繰り返しながら『次の一歩』を見つけている」と語った。
また、子どもたちにとって重要な場となりつつあるとは言え、オンライン支援は万能ではなく、それだけで完結するものではない。学校をはじめ、スクールソーシャルワーカーやフリースクールなど、ケースによって連携先は異なるが、リアルの支援者と共にさまざまな観点で連携しているという。例えば、受験などは学校との連携が不可欠となり、自傷行為や希死念慮、家出などの緊急事態には、各専門家の手が必要になる。また、自治体には出席扱いの認定根拠として月に1回レポートを送付しているという。
実際に、room-Kを利用する子どもたちの実態はどのようなものなのだろうか。まず、入会時に保護者から取得したデータによると、「登校頻度がゼロ」という子どもは68.5%に上る。学校が子どもの様子をつかむことが難しいため、room-Kが学校と家庭の橋渡し役になることも期待される。そして、不登校事由は複合的であり、学校で過ごすことへの不安や、それが身体症状に表れるケースも多いという。日常的な困りごとや発達特性についても、感覚過敏、対人面の苦手意識、こだわり、多動傾向など、一人ひとり異なる特性を抱えており、個別最適な関わり方が求められている。加えて、学習面や運動面、行動面で何かしらの困難があるケースは約30%、精神疾患を抱えているケースが12.4%となっており、そうした点からも専門家を含めた多様な地域の支援リソースを巻き込むことが必要と思われる。
さらに保護者や家族についても、不登校や病気、障害などがあり、保護者自身が就労困難と回答しているケースが約21%に上る。room-Kでは保護者支援も重視しているが、保護者および家庭への適切な支援が届いていないと改めて感じることも多いという。