room-Kを利用する子どもたちの事例
続いて、小学校1年生から不登校で家族以外との関わりがない小学4年生のケース、学校とのつながりはないが、受験に向けて学習面への焦りが本人に見られる中学3年生のケース、当初はオンライン支援を始めることも難しかったケースなど、room-Kによる支援事例が3例紹介された。
いずれも、メンターによる粘り強い関わり、本人を中心に意欲を引き出すコミュニケーションを大切にしていることがわかる。また、家庭の経済的困難や保護者の就労の問題などが見られる場合は、外部のリアル支援者と一緒にアプローチ方法を検討する。
こうしたケースを振り返り、阿久津氏は「オンラインならではの柔軟性を生かすことで、既存の支援とつながれていない子どもたちにアプローチできる可能性があると実感した」と語る。地域に依存せず同じ支援を提供でき、自宅から参加できるので心理的ハードルも低い。チャットや電話、Zoomといった手段や、画面や音声のオン・オフなど、子どもの状況や希望に応じた参加スタイルを選択、カスタマイズできることも利点だという。
事例にもあったように、リアルの支援者と連携することで相乗効果を出せる点にも可能性を感じているという。room-Kで把握した家庭の課題やニーズをもとに、リアル支援者と連携することでより包括的な支援体制が構築できる。作戦会議や保護者面談など定期的な予定を組みやすく、コミュニケーションが取れる立場として安否確認や経過観察などの役割も担いやすい。近すぎない関係だからこそ、発見できる課題やニーズもあるのではないかという。
一方で、阿久津氏は「オンライン支援の限界も感じている」という。いざという時に会えない物理的なハードルに加え、画面と音声のオン・オフの選択ができるのはよい面もありながら、子どもの様子がわかりにくい面もある。オンライン支援ですべてのニーズを満たせるわけではないため、日常的にリアルの支援者と手をとり合いながら、一つひとつのケースに根気よく向き合うことが重要となる。