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イベントレポート(ICT活用)

授業改善のため、自治体はいかにICT活用を進めるべきか? 大分県中津市と京都府舞鶴市の取り組み

パネルディスカッション「子どもたちの未来を創造するために~自治体で取り組んでいる教育改革~」レポート

 2019年12月に文部科学省が打ち出した「GIGAスクール構想」。コロナ禍で当初の計画が前倒しされ、全国各地の学校で1人1台端末の導入・利活用が進められてきた。そして今、機器の管理やコスト、また人的リソースなどの課題を踏まえ、「子どもたちのために授業をどう改善していくか」という新たな議論が進みつつある。そのテーマのもと、2月8日に開催された公開パネルディスカッションでは、中津市教育委員会と舞鶴市教育委員会から教育長らが登壇。SB C&S株式会社 エデュケーションICT統括部 統括部長の古泉学氏や、モデレーターを務めた株式会社Doit 代表取締役の土井敏裕氏を交えて、自治体における教育改革の実情について意見を交換した。

子どもたちの未来のために重要な「教員の意識改革」

 今回のパネルディスカッションには、大分県中津市と京都府舞鶴市の教育委員会関係者が参加した。中津市は福沢諭吉を輩出し、かつては蘭学も盛んな学問を重んじる土地柄で、小学校21校、中学校10校を擁する大分県では3番目に人口が多い市だ。一方、舞鶴市は、海に面した豊かな自然と歴史ある街であり、小学校20校、中学校7校を擁する。引揚桟橋でも知られ、平和教育を重んじている。

 舞鶴市教育委員会 教育長の奥水孝志氏は「子どもたちの幸せのために教育はある。『ふるさと舞鶴を愛し、夢に向かって将来を切り拓く子ども』を教育振興大綱として掲げ、『0~15歳まで切れ目ない質の高い教育の充実』の基本理念のもと、現在は小中一貫教育およびGIGAスクール構想の推進を柱として教育改革を進めている」と語る。

 そして「個人的には『現状維持は後退』を信条に、GIGAスクール構想はまさに授業を改革するチャンスだと認識している。かつて英語教育にネイティブのALT(外国語指導助手)が導入され、授業が文法や訳読からコミュニケーション活動中心に大きく変わった経験がある。そのときと同様に、まずは教える側の意識改革が必要だと考えている。端末やデジタル教科書などの学習環境を整えただけでは改革は難しく、現場の先生とともに変えていくことが必須」と強調した。

左から、舞鶴市教育委員会 教育長 奥水孝志氏、指導担当課長 岡本恵理子氏、教育振興部長 濵野滋氏
左から、舞鶴市教育委員会 教育長 奥水孝志氏、指導担当課長 岡本恵理子氏、教育振興部長 濵野滋氏

 指導担当課長の岡本恵理子氏は「小中一貫教育が始まり、多くの先生に協力してもらいながら9年間のカリキュラムづくりを行ったが、現場で毎日実践するのは難しいという課題もあった」と取り組みを振り返り、「その後、新しい学習指導要領で『主体的・対話的で深い学び』が打ち出され、現場の先生に伝えるために『探究し、学び続ける授業デザイン 舞ラーニング(以下、舞ラーニング)』を作成して配布した」と紹介した。

 「舞ラーニング」は単元や授業の中で「見通しを持つ」「自分の考えを持つ」「学び合い深め合う」「学びを確かめ振り返る」「新たな学びにつなげる」という5つの過程をサイクルとし、教員が大切にしたい学びについてさまざまな意見を反映させている。

 一方、中津市では「自立する力を育て、社会で活躍できる人材の育成」を教育目標に掲げ、「主体的に学ぶ子ども」「基礎的な知識・技能の確実な習得」「ふるさと中津への誇りを持ち、学びを社会に生かす子ども」を目指す子どもの姿としている。

 中津市教育委員会 教育長の粟田英代氏は「子どもたち一人ひとりに、自らの人生を幸せに生き抜く力と、よりよい社会をつくる資質を育ててほしいと考えている」と語る。そして「そのために最も大切な『主体的に学ぶ子ども』を育成するには、先生が変わり、授業を変える必要がある。『先生が教える授業ではなく、子どもたちが学ぶ授業へ』を合言葉に、先生方も主体的に自身のスキルを上げて変わっていくことを重視している」と述べた。

 さらに「社会変化に伴って必要となる情報活用能力」を義務教育中に子どもたちに身につけてもらうこと、さまざまな分野で求められている「グローバルに考えてローカルに行動できる人材」の育成を意識した施策に取り組んでいるという。粟田氏は「ICTの活用により、探究や表現、協働などの学習分野において、子どもたちの成長は目を見張るものがある。ますます発展させていってもらえるものと期待している」と力強く語った。

左から、中津市教育委員会 教育長 粟田英代氏、指導主事 小野次也氏
左から、中津市教育委員会 教育長 粟田英代氏、指導主事 小野次也氏

 指導主事の小野次也氏は「中津市では、以前から『一人ひとりを大切にする教育』を目指してきた」と語り、実現のために「みんな活躍授業」に取り組んでいることを紹介した。その目標は「子どもたちが生き生きとして、達成感を持ち、笑顔でつながりや成長を実感できること」であり、「みんなが活躍すること」だという。そのために、学び合う土台づくりである「見通しを持つ」「課題解決のためにキーワードを用いる」に加え、「全員が表現する」「みんなで考察する」を重要ポイントとして掲げている。

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GIGAスクール構想で両市の学びはどう変わったのか?

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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