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フィンランド教育動向を現地から学ぶ――教育イベント「Educa2020」の報告と教育改革の歴史

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2020/04/06 07:00

 学力が高く、幸福度も高いフィンランド。その鍵はどこにあるのか――。現地の大学院で学ぶ田中潤子氏が2月、フィンランドからオンラインで報告会を行った。テーマは1月に開催された同国最大の教育イベント「Educa2020」の報告、そして教育改革の歴史だ。

PISAの順位は下がっても生活満足度と読解力は高いフィンランド

 田中氏は2019年8月からフィンランド在住で、中部にあるオウルの大学院で教育学を学んでいる。そのきっかけについて、「日本は自己肯定感が低い。どうやったら上がるのか、フィンランドに住んで学ぶことで新しい視点が得られるかもと思いました」と語る。

 フィンランドと教育といえば、経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)の上位に入る国として知られるが、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの順位が2000年はそれぞれ1位、4位、3位、2003年は1位、2位、1位、2006年は2位、2位、1位とトップクラスだった。だが、中国やシンガポールが上位に入るようになりフィンランドの順位は下降傾向に、それぞれ、2018年は7位、16位、6位とトップ5圏外となった。一方で、フィンランドの子どものは活満足度が高い、読解力が高いといった2点をアピールしているという。

 また、PISAで注目されたことを活用してフィンランドは、視察ビジネスや、教育方針などの取り組みをパッケージにして販売するなどしている。これは“Education Export”と呼ばれる大きな産業分野になりつつあるとも報告する。

 そのフィンランドで毎年1月に開催されるのが国内最大級の教育イベント「Educa」だ。今年は1月24日と25日、首都ヘルシンキで開催され、教科書や教材会社をはじめ、教育に関連する団体や企業から2万人近くの人が集まったという。

 展示としては、語学など日本でもありそうな教材だけではなく、感情表現のワーク、ポジティブ心理学を土台に児童・生徒の良いところを伸ばすアプローチの“See the Good!”を実践するカードとテキストなどもあった。森が多いフィンランドならではといえる自然教育のための教材の展示もあれば、冬は室内で過ごす時間が長いので屋内スポーツもある。また、ロボットなどのテクノロジーに触れる教材もあった。家族の多様性を教師が学ぶのを支援する団体、SDGsを授業に取り入れるための活動をする団体もブースを構えていた様子を、数々の写真とともに報告した。

感情表現のワーク教材
感情表現のワーク教材
家族の多様性理解を支援する団体のブースも
家族の多様性理解を支援する団体のブースも

先生の“スーパーパワー”は何か?

 今年から英語でも行われるようになった講演から、田中氏が紹介したのが「フィンランドの先生のスーパーパワー」としたセッション。先生数人がフィンランドの先生の素晴らしいところについて語るもので、「Trust(信頼)」「Creativity(創造性)」などが挙がったという。「日本の先生たちに聞いたら何が出てくるか気になります」と田中氏。

 それぞれの言葉の背景も説明した。「Trust(信頼)」については、「フィンランドでは校長先生や先生に対する子どもたちと保護者からの信頼が高い」と田中氏。「Creativity(創造性)」については、「先生は教科書を自由に選べるし、研究授業などもない。基本的にクラスで何をやるのかは自分次第で、誰かが先生を評価することもありません」と田中氏、「自分のやり方を見つけるのが先生の仕事なので、Creativityが挙がるのかもしれない」と続けた。

 同じく英語での講演では、教育文化省の担当者がフィンランドの教育について説明するセッションもあった。特徴として「授業時間が短い」「学校間の違いが少ない」「女の子の方が男の子よりパフォーマンスが高い」「コストがあまりかからない」などのポイントが挙がった。「給食は無料。すべての子どもたちに機会がある。教えてもらうというより、自分で学んでいくことを早期に身につけようとしている」と田中氏は言う。そのため、「今日は勉強したくないと思うとずっとそのまま(勉強しない)。勉強したいと思った時に勉強すればいい」とのこと。

 教師は、大学院を修了した修士課程が必須だ。自治体や学校の権限が強いところも特徴と田中氏。高校段階では、普通高校と職業専門学校に分かれるが、「実際の経験を積んで働きたい人は職業専門学校に行き、勉強をそのまま続けるなら普通高校へ」(田中氏)といった考え方で、どちらが優秀というのはないのだという。

 フィンランドでは2016年に教育カリキュラムを変革した。講演ではこれについての説明もあったようで、教育文科省の担当者が、世界の変化、学習と能力のコンセプトの変化、そして学生の役割、教師と教えることの役割がそれぞれ変化し、学習コミュニティとしての学校に影響を与えていると背景を説明したそうだ。

 教師への教育については、リサーチが土台になっているという。「調査やデータに基づくリサーチを大切にしています」と田中氏は説明する。デジタル教材のブレンド、インクルーシブ教育など、多様なテーマがある中で、田中氏は体を動かすフィジカルアクティビティを取り入れる動きも紹介した。

 オープニングパネルのテーマは「教育で気候変動にどう取り組むか」。Well-Being(心身ともに幸福な状態)について多く語られたと報告した。


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著者プロフィール

  • 末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

    フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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