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イベントレポート(海外動向)

コロナ禍で広がる教育の「デジタルデバイド」――世界の取り組みは?【Bett Fest 2021】

Bett Fest 2021 レポート

 新型コロナウイルス感染症は世界中の教育界に影響を与えた。多くの教育現場がICTを活用したオンライン学習を導入し「教育のデジタル化」が予期せず一気に進んだ。その一方で、家庭にデバイスがないなどの「デジタル格差」の問題も露呈した。2021年1月にオンラインで開催されたイギリスの教育テクノロジーのイベント「Bett Fest 2021」では、コロナ禍における教育現場の課題と知見を共有するセッションが多数展開。「Improving access and skills for students at all levels」と題して行われたセッションでは、さまざまな立場の教育者がデジタル格差問題とその解決策について、現場の視点で語られた。

コロナ禍で浮き彫りになった2つのデジタルデバイド

 物理的なデジタルデバイド(格差)と戦っているのが、英リーズのパークランド小学校(Parklands Primary School)で校長を務めるChris Dyson氏だ。「新型コロナにより、格差がさらに開いている」と危惧を隠さない。リーズでは比較的貧困地区にあるという同校で、保護者に調査したところ、ノートPCを持っている家庭はわずか18%、デジタルコンテンツをやり取りするデバイスはスマートフォンしかないという家庭は60%だったという。

 Dyson氏は「(コロナ禍になって)1年足らず、この間オンラインで教材がたくさん準備されるなど、遠隔教育は進展した。だが、デバイスにアクセスできなければ、広帯域のネットワークがなければ、メリットが受けられない」と述べる。

 「家に自分の部屋があり、学習に使えるノートPCとネットワークがある子どもと、そういた環境が整っていない子どもとの間に、大きな差ができている」(Dyson氏)

登壇した5名の教育者たち。

登壇した教育者たち。Intrinsic Labs 教育ディレクターで今回のモデレーターのJoysy John氏(上段左)、バートン・ぺブリル・シックス・フォーム・カレッジ 学習支援教科リーダー Laura Stephens氏(上段中央)、デイラ・インターナショナル・スクール中等部 副校長 Paul Gardner氏(上段右)、パークランド小学校 校長 Chris Dyson氏(下段左)、Education Cannot Wait(UNICEF) Madge Thomas氏(下段右)。

 さらに、スキルの格差についても指摘された。「デジタルリテラシーを教えるだけでは不十分」と話すのは、英ハンプシャーにあるバートン・ぺブリル・シックス・フォーム・カレッジ(Barton Peveril Sixth Form College)で学習支援教科リーダーを務めるLaura Stephens氏。「教師は生徒のデジタルスキルにも目を配るべき」と指摘する。Stephens氏は2020年、教師の取り組みを認める年次奨励賞Pearson National Teaching Awardsで銀賞を受賞している。

 デジタルデバイスを使うために必要な操作のスキルだけでは不十分であり、「与えられた情報をデジタルで整理し、効率よく消化する」部分は、見過ごされがちだというのだ。「デジタルを使った学びは素晴らしい。だが、生徒が日常で受け取っているデジタルの情報量はどのぐらいか、どのように取り組んでいるのかなども配慮すべき」とStephens氏。特に通常の授業において学習面で支援を必要としている子どもは、デジタルデバイスを使うためのリソースを与えるだけでは不十分だという。

 新型コロナウイルス感染拡大の前から非同期型教育を実施しているというアラブ首長国連邦ドバイにあるデイラ・インターナショナル・スクール(Deira International School)の中等部副校長、Paul Gardner氏は、教える側の課題として「教師やスタッフがデジタルをストレスなく使いこなせること。品質を最優先しながら授業ができなければならない」と述べた。

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企業とのコラボや生徒同士の「教え合い」――課題解決の具体例

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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