コロナ禍で浮き彫りになった2つのデジタルデバイド
物理的なデジタルデバイド(格差)と戦っているのが、英リーズのパークランド小学校(Parklands Primary School)で校長を務めるChris Dyson氏だ。「新型コロナにより、格差がさらに開いている」と危惧を隠さない。リーズでは比較的貧困地区にあるという同校で、保護者に調査したところ、ノートPCを持っている家庭はわずか18%、デジタルコンテンツをやり取りするデバイスはスマートフォンしかないという家庭は60%だったという。
Dyson氏は「(コロナ禍になって)1年足らず、この間オンラインで教材がたくさん準備されるなど、遠隔教育は進展した。だが、デバイスにアクセスできなければ、広帯域のネットワークがなければ、メリットが受けられない」と述べる。
「家に自分の部屋があり、学習に使えるノートPCとネットワークがある子どもと、そういた環境が整っていない子どもとの間に、大きな差ができている」(Dyson氏)
さらに、スキルの格差についても指摘された。「デジタルリテラシーを教えるだけでは不十分」と話すのは、英ハンプシャーにあるバートン・ぺブリル・シックス・フォーム・カレッジ(Barton Peveril Sixth Form College)で学習支援教科リーダーを務めるLaura Stephens氏。「教師は生徒のデジタルスキルにも目を配るべき」と指摘する。Stephens氏は2020年、教師の取り組みを認める年次奨励賞Pearson National Teaching Awardsで銀賞を受賞している。
デジタルデバイスを使うために必要な操作のスキルだけでは不十分であり、「与えられた情報をデジタルで整理し、効率よく消化する」部分は、見過ごされがちだというのだ。「デジタルを使った学びは素晴らしい。だが、生徒が日常で受け取っているデジタルの情報量はどのぐらいか、どのように取り組んでいるのかなども配慮すべき」とStephens氏。特に通常の授業において学習面で支援を必要としている子どもは、デジタルデバイスを使うためのリソースを与えるだけでは不十分だという。
新型コロナウイルス感染拡大の前から非同期型教育を実施しているというアラブ首長国連邦ドバイにあるデイラ・インターナショナル・スクール(Deira International School)の中等部副校長、Paul Gardner氏は、教える側の課題として「教師やスタッフがデジタルをストレスなく使いこなせること。品質を最優先しながら授業ができなければならない」と述べた。