米国でもコンピューターサイエンスを学ぶ女子学生が少ない
弁護士であるSaujani氏がGirls Who Codeを設立することになったきっかけは、2010年に選挙に出馬したときだ。選挙運動の一環で学校を訪問したとき、コンピューターサイエンスを学ぶ女子学生が少ない現実を目の当たりにしたという。
「教室には男子学生ばかり。女子学生は見当たらなかった。米国の人口の半分が女性なのに、おかしいと思った」とSaujani氏。残念ながら選挙は当選しなかったが、「若い女性がコンピュータースキルを身につけ、21世紀のチャンスを追求してもらう」ことを目的にGirls Who Codeを立ち上げた。
実は、テクノロジー分野での男女比率は悪化している。Saujani氏は、1990年代から2010年代にかけてコンピューターサイエンス専門家のうち女性の比率が減少しているというデータを紹介した。
女子学生にコンピューターに触れてもらうために、Girls Who Codeでは、放課後のクラブ、大学向け、夏休みの集中コース、と大きく3つのプログラムを展開している。
放課後のクラブは、小学生から高校生を対象とし、無料で週に1~2時間の活動を行う。全米では1万以上のクラブを展開しているという。
大学向けのプログラム(「College Loop」)は、「コンピューターサイエンスを学びたいと思って大学に行っても、ダイバーシティがないために退学するという比率は高い」(Saujani氏)という問題に目をつけ、コードを教えるだけでなくコミュニティ活動も重視する。
夏休みの集中コースは、スポンサー企業内で展開する2週間のコース。20人1グループで活動する。参加者の半数が貧困家庭や有色人種だという。これらのプログラムの多くが、コロナ禍でオンラインに移行して継続している。
プログラムの受講者は30万人に達し、米国、カナダ、英国で5億人の女子学生にリーチしたとSaujani氏は胸を張る。Girls Who Codeは2019年、Fast Companyにより、最もイノベーティブな非営利団体に選ばれている。
女性活躍の文脈でよく“パイプライン”という言葉が使われるように、女子学生がコードを学んだり、コンピューターサイエンス学部に進むことは、ハイテク企業のジェンダーギャップ解消の重要なステップとなる。Girls Who Codeはこのパイプライン問題に取り組むという位置付けだが、スタートから9年、少しずつよい影響は出ているようだ。
Saujani氏によると、Girls Who Code開始時、テクノロジー業界における女性の比率は25%以下、大学のコンピューターサイエンス学部における女子学生の比率は18%以下だった。現在、コンピューターサイエンス学部の女子学生の比率は30~40%になっているそうだ。マサチューセッツ工科大学(MIT)に至っては、ほぼ50%に達しているという。