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イベントレポート(海外動向)

フィンランド教育動向を現地から学ぶ――教育イベント「Educa2020」の報告と教育改革の歴史

起業家精神、権利と義務、宗教などを授業で学ぶ

 続いて田中氏は、これまで約6か月のフィンランド滞在から感じたこの国の特徴的な教育をいくつか紹介した。

 最初に紹介したのは、アントレプレナー(起業家)教育。幼児から行われているというが、事例として田中氏が紹介したのは、選択制の「ビジネス」の授業で行われているもの。すべての学校ではないが、主に中学2年から高校1年ぐらいの生徒が取り組み、起業するというより、自分の道を自分で切り開くための意味合いが強いようだ。授業では会社を作ることになっており、ゲームのキャラクターのカスタマイズに関する事業、リサイクル素材で飾りを作って販売する事業、家事代行などをビジネスとした企業が誕生しているようだ。

 また、多くの学校が6年生、中学3年生で取り入れる“ウリトゥスキュラ(Me & My City)”も紹介した。1日の仕事体験を行うものだが、その前に、「自分は何が好きか」「マネージャー職がしたいのか、平社員をしたいのか」など日本の学生が就職活動で考える自己分析に近いことを行うのだそうだ。

 このほか、“リサーチクエスチョン”として、大学などでやるような研究を小学2年生、4年生で行っていることにも触れた。2年生は身体の臓器について、4年生は家庭の財政について、「データ、本やニュースから調べながら自分なりの答えを出す。調べ学習に近い」と田中氏。

 このほか、宗教の授業、人権などの「権利と義務」について学ぶ公民のような授業もあるという。「どういったプロセスで裁判を起こすのかを学んだり、遺産相続の計算をしたり」と田中氏は内容を説明する。例えば、権利と義務については、「日本では義務について教わっても権利についてはあまり教わらないが、フィンランドはどういった時に基本的人権を使うかなどを教わる。ストライキについても、起こす権利があると思ったら起こしている」と田中氏は比較した。

保護者が学校に家庭での教育方針を提出

 授業ではないが、田中氏が挙げた特徴で興味深いのが、家庭と学校との関わりだ。田中氏の暮らすオウルでは、家庭での教育方針を学校に提出することになっているという。「学校の先生がすべてをやるのではなく、家庭の教育方針があり、学校の先生がサポートするという視点を持っている。学校が教えてくれるという日本とは違う」と田中氏は説明した。

 評価についても、絶対評価でも相対評価でもなく、自己評価で決まる。「自分がここまでやりたい、できるようになりたいという目標に対してどうだったのかを評価し、学期ごとの評価をする三者面談では、それについて話し合う」と田中氏。自分がどうだったかを重視しているので、「他人のせいにできない。頑張らないといけないといった気持ちになるのでは」と分析した。

 また教育現場の声としては、「教員の仕事は安定しており、家族との時間を取れるから選んだ」「中高の先生の方が給与は良く、小学校、保育士と下がっていく」などの声だけでなく、「カリキュラムの変革により忙しくなった」「教員になりたい人は減っている」なども紹介した。

教育現場の声
教育現場の声

「持てる資源を投じる」ところから始まった教育への投資

 実はフィンランドにおける教育の歴史は、どちらかというと浅い。地理的にスウェーデンとロシアの間に挟まれ、支配されてきたフィンランドが独立したのは1917年。その後の内戦、第二次世界大戦をへて、急速に都市化が進む地域が出たために都市部と農村部の格差が生まれた。第二次世界大戦後から教育は無償、給食も無償になる。そして1970年代、「持てる資源のほとんどを教育に投資する」として教育改革が始まった。

 改革の下、初等学校と中等学校が統合学校となり、義務教育が6年から9年に延長された。教員育成でも改革が進み、1979年より修士号が必須となった。隣国ロシアとの貿易に依存していたこともあり1991年のソ連崩壊で不況に陥るが、ここで国としての強みを作るべく「教育・研究・開発の3分野に投資する」ことを決定。日本の学習指導要領(「コアカリキュラム」)は3分の1に圧縮され、教科書検定も廃止された。中央集権型から地方へ、そして学校に権限が移ったのもこの頃だ。

 こういった歴史を振り返りながら、田中氏はポイントとして、以下を挙げた。

  • 革命時からの教育への投資
  • 家庭環境に左右されない平等へのこだわり
  • 地方自治体の権限
  • 教員育成
  • 教員への信頼(自由裁量と地位)

 だが模索は続く。フィンランドが教育の分野で模倣したというスウェーデンでは、私立が増えて親が学校を選べるようになり格差が広がっていると言われている。フィンランドもスウェーデンのように競争が激しくなるのかといった議論も生まれていると田中氏は紹介する。

 最後に田中氏は、自身のテーマ「日本は自己肯定感が低いがどうやったら上がるのか」について、「フィンランドの仕組みを持ってくればいい、というものではない。日本の良さは何か、日本の良さを変えることなくうまく利用して伸ばすことはできないか」と考えを話す。「どこかの国をまねするのではなく、日本の価値を見いだして日本の道を切り開いていくことができないかを考えています」と田中氏は述べた。

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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