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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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大学のDX事例紹介

非情報部門の職員が2年間で179件の業務システムを内製開発! 香川大学「デジタルONEアンバサダー」


 職員自身が自分の業務を効率化するため、さまざまなシステムを開発している香川大学。学生も参加する組織「DXラボ」だけでなく、職員による業務システムの内製開発を推進するため、同学では2022年から「デジタルONEアンバサダー」を任命する活動を始めた。その結果、非情報部門の職員が自らノーコード・ローコードツールを使った開発に取り組むようになり、2年間で179件もの業務システムが開発されたという。非情報部門の職員がシステム開発に取り組めるようになったのはなぜか。そもそも、大学職員自身がシステムを内製化するメリットとは何か。同学で活動をけん引する情報メディアセンターの八重樫理人教授と、情報部情報企画課の末廣紀史氏、そして実際に業務システムを開発した職員の皆さんにお話を伺った。

 学生が学内の業務システム開発に携わる「DXラボ」に関しては以下の記事をご覧ください。

お話を伺った香川大学教職員の方々

  • 香川大学創造工学部創造工学科 情報システム・セキュリティコース 教授/同学 情報メディアセンター センター長 八重樫理人氏
  • 同学 情報部情報企画課 課長 武田啓之氏
  • 同学 情報部情報企画課 課長補佐 末廣紀史氏
  • 同学 林町地区統合事務センター学務課 課長補佐 池田紗和子氏
  • 同学 医学部経営企画課 戦略企画 係長 浪越俊介氏
  • 同学 教育・学生支援部 学生生活支援課 課長 成重伸昭氏
左から、武田啓之氏、浪越俊介氏、池田紗和子氏、成重伸昭氏、末廣紀史氏、八重樫理人氏
左から、武田啓之氏、浪越俊介氏、池田紗和子氏、成重伸昭氏、末廣紀史氏、八重樫理人氏

大手ベンダーでは賄えないニッチな部分を自分たちで作る

──まずは、なぜ「デジタルONEアンバサダー」の取り組みが始まったのか、背景を教えていただけますか。

末廣氏(以下敬称略):経済産業省も発表している通り、近年、情報系人材の不足が深刻化しています。また、一口に情報系人材と言っても、その役割や領域は多様です。企業においては業務システムを開発する側だけでなく、それを使う事業部側にもデジタル技術への理解が必要となります。

末廣紀史氏
末廣紀史氏

 これは香川大学でも同様で、DXを推進するためには学内職員の協力が不可欠でありながら、職員の中で情報系人材が不足しているといった問題がありました。

 そこで、業務システム開発のハンズオンを職員に体験してもらう活動を、2021年に始めました。こちらは、すでに学生を中心としたノーコード・ローコードツールでの内製開発の取り組みである「DXラボ」を、職員にも展開していった形です。ハンズオンの講師はDXラボの学生が務めました。

 ハンズオンの内容は、前半で「Microsoft Forms」を使って「イベント参加受付システム」を開発し、後半ではフォームに入力されたデータを「Microsoft Power BI」で可視化するというものです。開発の工程を一通り体験することで「自分の仕事もシステム化できるのではないか」と実感してもらうことが目的です。

業務システム内製開発ハンズオンの実施内容例
業務システム内製開発ハンズオンの実施内容例

 2021年に本学4つのキャンパスをキャラバン的に回って短期間に3回のハンズオンを開催し、200名ほどの職員が参加しました。このハンズオンを契機に、初歩的なローコード・ノーコードツールのスキル習得や理解が進んでいきました。

八重樫氏(以下敬称略):ちなみに、このハンズオンは現在ほかの大学や香川県内の民間企業にも展開しており、『業務システム 内製開発 入門編』という電子書籍も発行しています。全国の大学からご依頼いただき、本学の職員や学生が講師としてハンズオンを実施しています。ここでも非情報部門の職員が講師を務めることで、システム開発へのハードルを下げることを意識しているんです。

八重樫理人氏
八重樫理人氏

末廣:ハンズオンを通して、職員の間でも「実際の業務で実践してみたい」という機運が高まっていきました。そして2022年度から、非情報部門の職員約60名を毎年「デジタルONEアンバサダー」に任命する活動を始めました。

 毎年メンバーは替わっていき、今年で3年目になりました。初年度である2022年度は105件、2023年度は74件と、合計179件の業務システムを職員が開発し、業務改善に役立てています。

八重樫:これまでのビジネススキルはWordやExcelを使いこなすことでしたが、いずれ「ノーコード・ローコードツールを使って簡単なシステムを作る」スキルが当たり前に求められるようになると予測しています。

──実際に職員の方へ展開してみると、予想以上に業務システムの内製化のニーズが高かったのでしょうか?

八重樫:そうですね。業務システムの開発は、大手ベンダーへ依頼しても学内の業務に詳しくないため、フィットしたシステムにならないこともあります。海外の報告では業務システムの機能の8割は使われていない[※]と言われていますが、特に日本ではベンダーに開発を任せっきりにする慣習が強く、業務に関する知識が不足したまま開発が進む傾向があります。

 内製開発では、業務や現場の課題をよく知っている人自身がシステムを作るので、「使える」システムができあがるのです。実際に、開発された179の業務システムのうち、6~7割は稼働し続けています。

 また、ベンダーはビジネスの観点でペイできないような、小さなシステムを作ることはなかなか難しいものなんです。ですから、業務に寄り添ったニッチなシステムは、自分たちで作る必要があります。これらをどれだけやれるかが、DXにおいて重要だと考えています。

次のページ
非情報部門の職員が開発した業務システムの事例

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

 IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

EdTechZine編集長。好きな言葉は「愚公移山」。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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