盛山氏が授業で大切にする「学びへの素直さ」
JEES(NPO法人 全国初等教育研究会)は2012年、「若い先生を応援する」をミッションに発足したNPO法人だ。教育が複雑化する昨今、過酷な思いをしている若手教員が多く存在する。同法人は、そんな若手教員に向けて、フリーペーパーによる情報発信やイベント開催、研修といった支援活動を行っている。
JEES理事長で、東京学芸大学教職大学院・教授/学長特別補佐の堀田(ほりた)龍也氏は「授業づくりのベースには学級経営がある。大学の教員養成課程で、学級経営についてあまり習わないことは非常に大きな問題」と述べ、本シンポジウムのテーマである「学級経営」の重要性を示唆した。
セミナーでは最初に、筑波大学附属小学校の盛山隆雄氏による講演「授業のなかの学級経営」が行われた。講演では算数の専科教員である盛山氏の授業を例に、自身が大切にしていることを共有。その後、映像で実際の授業の様子を示しながら、学級経営のポイントが解説された。
盛山氏は授業において、以下の点を大切にしているという。
1つ目は「堅苦しくない雰囲気」だ。盛山氏のクラスではつぶやきが多いといい、挙手指名制ではなく、のびのびと学ぶことを志向している。教員はもちろん、子ども同士でも失敗を許容する空気を大事にし、「戸惑っている児童を軸に展開することが多い」と話した。
「一番大切なことは『学びへの素直さ』だと考えている。わからないときには、どこがわからないか友だちに話せること。もっといい考えが浮かんだときには遠慮なく言えること。そういった学びへの素直さ・誠実さを大事にしたい」(盛山氏)
2つ目に「互いの思いや考えへのリスペクト」を重視している。自分が持っていない考えを聞けることを「ありがたいこと」だと価値づけて、クラスで共有。リスペクトがあるからこそ、スルーしないで意見を言い、積極的に関わるスタンスだ。「『もうちょっとこうしたほうがいいと思う』『これは違うんじゃない?』と遠慮なく言えることが大事」と盛山氏。もちろん言い方の配慮は必要だが、「関わってもらえることはいいこと」という前提がある。特に、算数は問題解決の教科であるため「間違い」がつきものだ。間違いを否定するのはもったいないことで、むしろ「学びのプロセスである」という考えを児童に伝えている。
具体的には、ほかの児童が間違えた際に「おかしい」と指摘はしないルールだ。間違いと出会った場合は、まず「『なぜこれを間違いと言えるのか』を説明してみよう」、そして「なぜ○○さんはこう考えたのかを探ってみよう」と促す。最終的に、どう修正すればいいか導く方向に進む。
「間違いに対して、指摘ではなく『なぜ、こう考えたのかわかります!』と手が上がることは好ましいこと。正解主義に走らないように、チャレンジしたこと自体を尊重するように意識している」(盛山氏)