登壇者
- 株式会社コードタクト 代表取締役/Conductor 後藤正樹氏
- 株式会社MetaMoji 法人事業部 事業部長 植松繁氏
- 株式会社LoiLo 教育ICTコンサルタント 営業 鍵本優紀氏
モデレーター
- 株式会社情報通信総合研究所 特別研究員 平井聡一郎氏
適切なEdTechツール選びは「学びのビジョン」が起点
「さまざまなEdTechツールが教育現場に導入されていますが、すべてがうまく活用されているとは限りません。道具は適材適所であるべきで、目的や使い方によっては有用にも無駄にもなる。ツール導入を成功させるためには、その目的や開発思想を理解し、使う側が意志を持って選ぶことが大切です」
冒頭でそう語った平井聡一郎氏は、ICT教育の研究の傍ら、文部科学省のICT活用教育アドバイザーも務め、機器の導入・活用やプログラミング教育のエバンジェリストとして全国各地で講演や指導にあたっている。平井氏は、日本の教育が大きく変化し、国をもそれを推進していることを強調。その理由としてAIなどの進化により、多くの仕事が置き換わり、今後は人が仕事をする上で、コミュニケーション力や創造性、特殊な技能を必要とする専門性が求められていることを挙げた。
そうした近い未来の変化に対応するため、教育はどのように変わらないといけないのか。文科省は現在の枠組みの中で、指導内容を見直したり、指導法を改善したりすることで教育を変えていこうと考えている。一方、経済産業省は学びの枠組みから教育を変えることが望ましいとし、できれば来年、遅くとも5年後には新しい学びのための仕組みが構築されている必要があるとの方針を示し、さらに飛び級などの個人に応じた対応も不可欠としている。
それぞれの省庁によって差はあるが、どちらも「現在の教育をなんとかしなければならない」と認識しているのは間違いない。では、どうすればいいのか。平井氏はその打開策について「受け身の授業を変えなくてはいけません。さまざまな情報を得て咀嚼し、自分の課題として言語化し、表現すること。インプットするだけでなく、アウトプットすることが大切です」と示す。さらに「アウトプットしたことに対して、さまざまなフィードバックを得る。その繰り返しこそが学びの基本となります」と続ける。
インプット中心の授業から、アウトプット中心の授業へ。そのために有効な手段として、平井氏は次の3つのツールを紹介した。まず、Webブラウザ上でアクティブラーニングが可能になる「schoolTakt(スクールタクト)」、タブレット端末で使える手書きノートアプリ「MetaMoJi ClassRoom」、そしてプレゼンテーションの作成、双方向のやり取り、「シンキングツール」による思考の整理が簡単にできる「ロイロノート・スクール」だ。しかし、いずれも明確な開発思想がありながら、理解されないまま真価を発揮できないことがあるという。
平井氏は「価格やスペックではなく、『自分たちがどのような教育を行いたいか』というビジョンを起点にすることが重要です」と述べ、「その上で、ツールでどのようなことができるのかを理解し、選択する視点と価値観を先生が持つことが大切。そして『学習の内容:鍛錬か探究か』×『学びのスタイル:個別か一斉か』のマトリックスで、ツールが使われる場面を想定することも必要です。ツールごとの違いを比較することで、それぞれの思想や使い方、使う場面が明らかになります」とイベントの目的を語った。