登壇者
- スタディプラス株式会社 公教育事業部部長 中山早奈子氏
- スタディプラス株式会社 広報/Studyplusトレンド研究所 平尾耕太郎氏
- 公益財団法人山田進太郎D&I財団 事務局長 田中多恵氏
- 公益財団法人山田進太郎D&I財団 調査/政策提言・マーケティング担当 大洲早生李氏
- 茨城高等学校・中学校教諭(生物科)現進路指導担当 横倉友博氏
生の声から見えた「文理選択の課題」
まずスタディプラスが、高校生・大学1~2年生を対象に実施した「文理選択に関するアンケート調査」の結果について報告した。その結果から、同社は4つのトピックに注目したという。
【1】中学3年生時点で半数以上は、文理選択で迷う「グレーゾーン」
1つ目のトピックは、文理選択での迷いが生じている状態の「グレーゾーン」だ。「グレーゾーン」とは、スタディプラスと山田進太郎D&I財団が独自に定義した言葉で「(1)文理選択を迫られる約1年前の中学3年生時点で文系・理系を明確に選択できていない生徒」および「(2)選択できていたが後に最終的な進学先の文系・理系が逆転した生徒」を指す。
調査の結果、全体の約6割がグレーゾーンで、男女比では女子のほうがグレーゾーンの傾向が強く、文系では6割の生徒、理系では5割の生徒がグレーゾーンという結果となった。
【2】文系を選ぶ理由は、理系が苦手だから?
続いて注目したのは文系・理系の「選択理由」。特に、文系の選択理由で最多だったのが「理系科目が苦手だから」で、約半数がそのように回答しており、ネガティブな理由で文系を選択する傾向が伺える。特に女子はこの傾向が顕著で、「理系科目が苦手だったから」が男子と比較して12.3%高い。また、文理選択の際にどのような悩みがあったかについては、「選択したいほうに苦手科目があったので不安に思った」が男女ともにトップの結果に。こちらも女子では約6割と、男子と比べて苦手科目への不安が顕著な結果となった。
【3】理系を選ぶ理由は、将来像・キャリアが見えたから?
3つ目のトピックは、将来のキャリアと文理選択の関係性。理系を選択した生徒の選択理由を聞いた項目において、女子は「進学後のキャリアが見えたから」という理由が最も多い結果に。その一方で文系生徒は「理系のほうが将来有利だと思った」「文系科目は実用性に欠けるのではないかと思って不安だった」などの悩みを抱えていたことが明らかになった。
これらの結果から平尾氏は「将来性やキャリアといった観点で優位性を感じて理系を選ぶ生徒が多いが、文系を選んだとしても理系が有利だと感じるような生徒が多いことを示している」と指摘。特に女子のほうが将来性を重視していることが伺える結果となった点にも注目した。
【4】生徒は文理選択後の学びの内容やキャリアを知りたい
4つ目には、学校の進路指導に参考になるトピックを挙げた。「文理選択の際、どのような情報源を参考にしたか」という質問に対しては、「学校の先生」との回答が最多だった。ところが、学校や教員のサポートを受けて「自信が高まった」と回答した生徒は約半数にとどまり、残りの半数は「どちらでもない」「高まらなかった」と回答した。
文理選択の際に不足していた情報としては、将来のキャリアへの影響や、選択した先で学べる内容についてもっと知りたかったという回答が多かった。これを踏まえて平尾氏は「進路指導のサポート改善の余地が見られる結果」と分析した。
アンケート結果の考察をまとめると、以下の課題があると言える。
- 中3の段階ではグレーゾーンが過半数に達するが「文理選択」の時期は高1に集中しているので決めざるを得ない。
- 特に文系の生徒は「理系科目が苦手だったから」文系を選択するという形で、消極的な将来の選択になっている。
- 特に女子生徒は、理系科目が苦手、嫌い、向いていないなどネガティブな理由に引きずられている。
- 理系に進学した女子生徒も、男子と比較すると「選択したいほうに苦手科目があったので不安」になりがち。
- 一方、文系に進学した生徒は男女ともに「理系のほうが将来有利だと言われ、迷った」経験がある。