iPadは「1人でじっくり」にも「みんなで共同制作」でも使える
矢野充博氏は2006年から和歌山大学教育学部附属中学校に勤務し、現在はICT教育主任兼理科教諭として、同校で1人1台導入されたiPadの環境整備に携わっている。2015年にはApple Distinguished Educatorsの認定を受けた。
理科におけるICT活用のノウハウを伝えるべく、教育関係者向けのセミナーやYouTubeの「Yanoteaチャンネル」などでも発信し、2021年度の「第37回 東京書籍教育賞」では「中学校理科における気象現象の理解を深めるARの積極的活用」というテーマで中学校部門の優秀賞を受賞した。
セミナーの冒頭、矢野氏は和歌山大学教育学部附属中学校のICT環境整備について解説。2012年、教員がiPad miniを使い始めたことをきっかけに同校ではiPadの活用が進み、2013年には全教室へApple TVを配備、2019年の新入生からは各家庭が購入する形で1人1台のiPadを導入した。また、教員は校務用PCとしてMacBook Proを使用している。
iPadの活用について、矢野氏は「iPadは『1人』でも『みんな』でも使える。また視点を変えて、単純にツールとして『利用する』だけでなく、自分がイメージしたことを『表現する』使い方もある」と述べた。
なお同校はiPadを導入しているが、ChromebookやWindows PCにも同じことが言えるという。
iPad活用の最終段階では「先生は見守る」だけになる
続いて、矢野氏は生徒と先生のiPad活用段階として2つのピラミッド図を紹介。それぞれを3つのレベルに分けてレベルごとの解説を行った。
生徒のiPad活用
Level 1:広がり
既存の学習ツールと置き換えることができる段階。一例としては、今まで手渡ししていた数学のプリントを、iPad上で生徒が自ら取り出しノートに解いていくことにより、教員の配る手間が省かれるといったものがある。
Level 2:深まり
iPadでしかできない使い方が可能になる段階。例えば、これまで葉の気孔観察で顕微鏡をのぞいて数を数えていたものを、顕微鏡の拡大写真を撮りマークアップすることで、格段に数えやすくなる。さらにiPadであれば、写真を撮って簡単にシェアすることもできる。
Level 3:創造
チームで協働して新しいものを創造する段階。地元・和歌山県の地形を観察する授業では、波によって岩ができる過程をパラパラ漫画にしてアニメーションをつくる課題を出した。
先生のiPad活用
Level 1:知る
先生自身が活用方法についての情報収集をする。どのようなアプリがあるのかを、知る、調べるという段階。
Level 2:実感する
実際に授業で使ってみて、その有用性を先生自身が実感する段階。
Level 3:見守る
先生が見守るだけで、生徒は状況に応じて「今日はこのアプリを使おう」と活用ができるようになる段階。
ここで、矢野氏がセミナー参加者に「現在どのレベルにいるか」と問いかけると、レベル1から3までさまざまな回答がリアルタイムで寄せられ、先生自身のスキルや経験も多様であることが明らかになった。