アドビは、クリエイティブな人材の育成や教育機関向けの支援にも力を入れており、画像・動画・書籍・3Dデザインなどを制作でき、プロも使用しているクリエイティブサービス群「Adobe Creative Cloud」を学生向けに格安で提供したり、創造性を育む教育に関する調査や授業の支援活動なども行っていたりする。直感的な操作で子どもでも扱いやすいデザインツール「Adobe Express」は、小中高向けに無料で提供されている。
また、教育関係者の支援として、イノベーティブで実践的な教育活動を行っている先生方を認定する「Adobe Education Leader(AEL)」という組織も運営しており、グローバルで毎年300名ほどが認定される中、2022年度に日本では33名が認定されている。AELでは、授業実践や学校を横断したコミュニティ活動などを支援している。
AIによるアシストと、人と人とのコラボレーションの強化により、創造性をさらに加速
毎年イベント冒頭のキーノート(基調講演)では、各製品の新機能などが紹介されるが、今年は3つのテーマ「速さ、使いやすさ&スーパーパワー」「協業的なクリエイティビティ」「3Dと没入型体験の制作」に沿って紹介が進められた。
近年実用化が急速に進むAI技術(アドビでは「Adobe Sensei(アドビ・センセイ)」と呼称)を中心とした機能拡充により、制作にかかる時間を大幅に圧縮し、クリエイターの潜在能力をより発揮して、すばらしいユーザー体験を提供できるようになる様子が紹介された。
特に、最近ビデオゲームや動画などで広く活用されている3Dコンテンツの制作ツールについては説明の時間を割いており、3DやAR(拡張現実)・VR(仮想現実)によるコンテンツに対する今後の需用の高まりを示唆していた。
また、人々が求めるコンテンツやサービスの高度化や複雑化、多様化の背景もあり、創造的な活動における関係者間の協業を推し進める新機能の発表も多かった。インターネットを介して、アドビ製品のユーザーではない人々や、モバイル端末しか手元にない人、遠隔地にいる人ともリアルタイムにレビューやコミュニケーションを行える様子がデモンストレーションを通じて示された。
昨年アドビに買収されたクラウドベースのビデオ制作コラボレーションプラットフォーム「Frame.io」は、動画編集ツール「Adobe Premiere Pro(プレミアプロ)」の新機能としてシームレスに連携している様子も紹介されている。
また、先月買収が発表されて話題となったデザインの共同編集ツール「Figma(フィグマ)」の展開にも期待したい。米国の基調講演では、Adobe Fonts(書体提供サービス)との連携から着手し、ユーザーインターフェース以外の幅広いデザインの編集に対応していく展望が示されたという。