自分の良いところに目を向ける
フィンランドのニュースで、「私たちの目は青すぎるのか」という言葉が出てくることがあります。これは、自分たちがポジティブサイドにばかり焦点を合わせていることを少し揶揄する表現。実際、教育現場でも自分たちの「良いところ」に特に注目しています。
私自身、現在フィンランドの小学校でティーチングアシスタントとして働いていますが、子どもに対しても、そして大人(先生)に対しても、良い面を見ようとする意識が強くあります。とは言っても日本人からしてみたら、あまりイメージのつかないところ。具体的にどんな背景があるのか、見ていきましょう。
そもそもフィンランド人は、なぜ良いところにフォーカスするのか?
なぜフィンランド人が「良いところ」に注目するのか、それには以下のような理由があると考察しました。
アウトパフォーマンスにつながるから
- 良いところを伸ばした方が、伸びるスピードが速いし、他の人よりもうまくできる
- 良いところが分かれば、本人がそれを活かす工夫ができる
- 良いところが分かれば、周りもそれを活かしやすいポジションに配置できる
「良いところ」を見ている方がごきげんだから
- 良いところについて会話していた方が、気持ち良い
どれも、すごく合理的な根拠。良いところにフォーカスするのも納得ですね。
私が見てきたフィンランド教育では、この点を、とても機能的・効率的に行っている印象でした。日本の教育現場で実践する方のためにも、ヒントになればと願いながら今回はフィンランドの学校現場での具体的な取り組みを事例とともに紹介します。
(1)良いところを語る引き出しを作る
では早速、フィンランドの学校現場での取り組みを見てみましょう。どのような方法で良いところにフォーカスしているのでしょうか。大きく分けて、3つの取り組みがあるので、それぞれ紹介していきます。
- 良いところを語る引き出しを作る
- 良いところを認識する機会を作る
- 良いところを伸ばす機会を作る
まず1つ目の「良いところを語る引き出しを作る」。これは、意外と日本で意識されていないポイントだと感じました。フィンランドでは良いところを示す単語や表現を理解した上で、(2)(3)のステップに向かうよう仕組み化されています。
例えば、私の知る学校では「See the Good」というカードを使い、その人の強みを言葉にします。いきなりそれぞれの強みを語るのではなく、まずは強みにはどのようなものがあるのかを学習します。
See the Goodとは?
人間に共通する、26個の強みカード、10個のアクションカード、7個の感情カード、5個のアセスメントカードをまとめたものです。
このSee the Goodを使った取り組みはフィンランド全体の8割程度の学校で実施されています。強みのカードを見ると、裏には特徴が描かれています。
まずはSee the Goodの強みカードに書かれた内容が、具体的にどのようなものなのかを考える時間を設けます。ここでは低学年での様子を説明します。
例えば、「Humour(ユーモア)という強みがあるとどんなことが起こるのだろうか?」と話し合います。また数種類の指人形と強みカードを使って、Forgiveness(許せる心)という強みがあると友だちとの間でどんなことが起こるのかグループでお話を作ります。
他にも先生が本を読み聞かせ、その本に登場した3つのキャラクターにはそれぞれどんな強みがあるのかをキャラクターの絵と強みを示すワードをセットにしてノートに描きます。一通り説明をした後には、どんな種類の強みがあるのか、日常的に目に触れるよう、窓や壁にカードを貼っておきます。
図工の時間にも、Perseverance(根気)の特徴を表しているカードに書かれている黒いカラスの形を画用紙で作ったりします。音楽の授業では「いい友だち」という歌を歌って、「いい友だち」とは、どんな良いところを持つのか、特徴を話し合います。このように、普段の科目の学びの中にも織り交ぜていきます。