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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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3つの柱と9つの課題が含まれた、経産省「『未来の教室』とEdTech研究会」の第2次提言が発表

 経済産業省が設置した教育改革に関する有識者会議「『未来の教室』とEdTech研究会」は、6月25日に第2次提言を公表した。本稿では同日に行われた記者会見の模様をお伝えする。

 2018年1月に始動した「『未来の教室』とEdTech研究会(以下、本研究会)」。AIや動画、オンライン通話などのデジタル技術によって、いかに人間の創造性や課題解決力を育み、個別最適化された新しい教育を構築すべきか議論が重ねられてきた。

 今回発表された第2次提言は「『未来の教室』ビジョン」としてまとめられた。内容としては、2018年6月の第1次提言をもとに、その後全国各地の教育現場で実施した23の実証事業の成果を踏まえ、初等中等教育分野に焦点を絞って今後の政策課題を整理したものとなる。

 具体的には、「未来の教室」に向けた改革の柱を「学びのSTEAM化」「学びの自律化、個別最適化」「新しい環境づくり」の3つに整理し、その実現に向けて乗り越えるべき9つの課題とそれに対応するアクションについて提言された。

 冒頭、本研究会の事務局である経済産業省 教育産業室 室長の浅野大介氏が「世界の潮流や現在の日本の課題を踏まえ、やるべきことを提言した」とコメント。戦後、日本は経済成長を続け、人口も増加していた。それにふさわしい教育がこれまで行われてきたが、状況は変わった。人口減少が始まり、ICTといった新しい技術が世の中に影響を与えている。

経済産業省 商務・サービスグループ サービス政策課 教育産業室の室長 浅野大介氏

経済産業省 商務・サービスグループ サービス政策課 教育産業室 室長 浅野大介氏

 本研究会の座長である津田塾大学の森田朗氏は「そうした時代を生き抜くことができる人材を育てるため、教育を変えていかなければならない」と語る。そして、「これまでのように目標を追求するだけでなく、目標そのものを自分たちで設定し、解決していく力が必要だ」と続けた。何が起きるかわからない時代、柔軟に対応する能力が必要とされているのだ。

津田塾大学 総合政策学部 教授/東京大学 名誉教授 森田朗氏
津田塾大学 総合政策学部 教授/東京大学 名誉教授 森田朗氏

 こうした人材を育てるため、先述した「未来の教室」3つの柱が提言された。子どもたちが好奇心を持って課題に取り組むため、知識の習得だけではなく、そこから新しいものを創り出していく、探究・プロジェクト型学習(PBL)の循環が重要とされる。併せて、個性を伸ばすための個別最適化された学びを実現するため、学習基盤に関しても既存のものから変えていく必要がある。

「未来の教室」の構築に向けて:3つの柱(経済産業省の資料より)
「未来の教室」の構築に向けて:3つの柱(経済産業省の資料より)

 3つの柱を実現するためには9つの課題があるとされた。ここではいくつかピックアップして紹介する。

 まず、「学びのSTEAM化」に向けて教材や教育手法が不足しているという課題。これはインターネット上に「STEAMライブラリー」、リアルな地域の場に「STEAM学習センター」を構築することで対応する。「STEAMライブラリー」はWikipediaとYouTubeが融合したイメージで、実際の授業で活用可能な指導案などを共有できるようにする。「STEAM学習センター」は専門高校や高等専門学校を「地域のSTEAM学習センター」として地域に開いて活用するというものだ。

 次に、探究・PBL学習を行う時間が足りないという課題。この課題に関しては、テクノロジーを活用した教材など、EdTechを用いて効率的に知識を習得し、捻出された時間を活用する。

 「学びの自律化、個別最適化」に向けて、一人ひとりの学習者の個性(認知特性や理解度、興味関心)への細やかな対応が不足している点については、ICTの技術を活用することで解決を試みる。具体的には、幼少期から個性や活動、学びを「学習ログ」として蓄積し、「個別学習計画」を策定。それに応じた学びが可能にする。さらに学習ログは学習者本人の役に立つだけではなく、情報を集積することで、教育方法の改善や、教材の開発にもつなげることができる。

 また「個別学習計画」を軸にすることで、一斉教育にとらわれない、多様な学び方が可能となる。到達度主義を導入することで、授業時間中にそれぞれの子どもが取り組むべき教科や単元を変えることや、学校教育やフリースクールなどの組み合わせを公的に認めること、インターネットの双方向性を活用した学びなどが具体例としてあげられた。

 本研究会の座長代理であるデジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏氏は「デジタルテクノロジーの特徴には可視化や定量化があり、これまで教員が職人の力で成し遂げてきたことを科学的に分析できるようになる」と、学習ログの可能性について述べた。

デジタルハリウッド大学大学院 教授 佐藤昌宏氏
デジタルハリウッド大学大学院 教授 佐藤昌宏氏

 3つ目の柱である「新しい学習基盤づくり」に関しては、学校のICTインフラが貧弱であることが大きな課題として存在する。パソコンを「新しい文房具」として考え、BYOD(家計負担での持参)や安価なパソコンの導入なども視野に入れながら「1人1台」環境の実現を必須とした。

 また、教員も子どもも手いっぱいで、創造性を発揮する余裕がないという課題については、学校の業務構造の抜本的改革が必要となる。そのために、まずは個々の学校が実態を把握することが必要であるとし、教員自らが現状を診断できる無料のツールを整備するとした。また、社会に求められる人材像に合わせて、部活動のあり方も見直すべき、と提言された。

 なお今回発表された提言について、「現行法令の合理的な解釈の範囲内で実現可能なことは明日からでも始める」とし、3年後の2022年までには「STEAMライブラリーの開発」や「1人1台パソコンに向けた目標と手段の明確化・提示」といった、改革の成果を最大化させる政策を実行するとした。

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https://edtechzine.jp/article/detail/2323 2019/06/28 23:20

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