AI時代における「情報」教育とは
現在何かと注目される「AI」。定義はさまざまながらもそのキーワードを聞かない日はないほどで、先日6月11日にも政府の統合イノベーション戦略推進会議が開かれ、人工知能(AI)技術を活用できる人材を育成する戦略案が検討されたことがニュースになったばかりだ。
このセミナーでは、日経BP社 教育とICT Online編集長の中野淳氏がコーディネーターを務め、AI時代を迎え「情報」に関連する教育がどう変わろうとしているのかを整理し、芸術分野でAIを活用した面白い事例などが紹介された。
スピーカー
- 東京学芸大学 副学長 松田恵示氏
- 東京藝術大学 先端芸術表現科 教授 芸術情報センター長兼任 古川聖氏
- 放送大学 教授 辰己丈夫氏
「情報」に関する教育は何がどう変わるのか?
まずは、「情報」関連の教育内容がどう変わるのかという基本事項をおさえておこう。10年に1度のペースで改訂される学習指導要領は、2020年の小学校に続き、2021年に中学校、2022年に高等学校で順次新版が全面実施される。日経BP社の中野氏はまず、新学習指導要領実施に伴うプログラミング関連の学習内容を整理した。
小学校ではプログラミングが学習に取り入れられることが明記され、中学校では「技術・家庭科」の技術分野でプログラミングに関する学習内容が増加する。また、高等学校では「情報科」の内容が、「情報I」「情報II」に再編され、「情報I」が必修となることにより、全ての生徒がプログラミングを学ぶことになる。
では、大学入試はどう変化するのだろうか。2021年1月から、現在の大学入試センター試験(以下、センター試験)に代わり大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が導入されることはすでによく知られているだろう。共通テストは、知識・技能だけでなく思考力、判断力、表現力を問う内容に転換する方針で、特に英語は4技能が評価の対象となり、大学側は民間試験の成績も活用できるようになることが注目されている。
中野氏によれば、共通テストに「情報I」が出題されるのは、2025年4月に大学に入学する学生(現在の中学1年生)の試験からの見込みだ。また、コンピューターを利用した入試「CBT(Computer Based Testing)」の実施が検討されているという。
放送大学の辰己氏は「情報」と大学入試の関係をさらに詳しく解説する。一般には混乱を招きやすい点だが、現在のセンター試験に「情報関連基礎」という科目があり、そこではすでにプログラミングも扱っている。ただしこの科目は、工業、商業、農業等の専門学科の生徒が「数学II・B」の代わりに受けることができるもので、受験者も少ない。出題の際のプログラミング言語には、DNCL(センター試験用手順記述標準言語)という日本語記述が含まれる独自言語が用いられている。
2003年に「情報」科が高等学校に新設されて以降、「情報」がセンター試験の科目になったことはなく、独自に「情報」を試験科目に設定している大学も非常に少ないのが現状だ。情報処理学会では、これまでにさまざまな形で試験問題の検討等に関わっており、さらに、大学入試センターが2018年度に問題の素案を教員から募集したことなども知られている。2025年1月に見込まれる実施に向けて、今後の展開が注目されるところだ。