子どもたち自身が情報リテラシーを身につける時代に
――子どもたちの情報リテラシーに対して、またLINEのサービスについて、保護者や先生はどのような捉え方をしているのでしょうか。
LINEは2011年に登場しました。子どもたちのスマホ利用も2012年頃から急速に増えてきており、ほぼ同じようなペースで普及してきたと言えるでしょう。そのため、サービス提供直後は若年層の利用者が多くの割合を占め、保護者から相談を受けた消費者生活センターや教育現場より「LINEとはなにか?」と問い合わせを頂くことが多かったように思います。それに応える形で、学校や公的機関で先生や職員、保護者向けの説明会にて、LINEの仕組みや安全安心の利用に向けた取り組みなどを紹介していました。
このように当初は大人向けの講演が多かったのですが、トラブルに対して大人が対応するのはもちろんのこと、「子どもたち自身にも情報リテラシーの向上を目的とした授業をしてほしい」との要望が多くなってきました。そういったなかで2014年、社内に専門部門を立ち上げ、学校などでの情報リテラシー教育に本格的に取り組むようになったのです。
2014年は全国の学校などから依頼をいただき、年間約300回の講演を行いました。それが徐々に口コミなどで広がり、現在では約2500回までに増え、小学生から高校生までを対象とした子ども向け授業が全体の7割以上を占めています。時期としてはスマホデビューが多い4月や長期休暇中のトラブルを懸念されて夏休み・冬休み前の依頼が増えますね。ちなみに、夏休み中は先生向けの講演依頼が多いです。
他者との「違い」に気づき、考える機会を提供
――子ども向けに実施されている情報リテラシー教育について、実際の内容を教えてください。
LINEの使い方や注意点ではなく、ネットの特性やネットコミュニケーションのあり方などについて考え、自分ごととして捉えてもらうことを重視しています。メディアで紹介されているようなトラブル例を挙げて怖がらせるのは簡単ですが、それでは「あれは特殊だから自分は大丈夫」と線を引いて終わってしまいます。そこで、日常的にネットを利用する子どもたち同士が、単純にトラブルの話に終わらず、その背景にある各自の価値観や経験を話すワークショップ形式の授業実践を行うことで、当事者意識の醸成や気づきをもたらすことができるのではないかと考えました。
たとえば、LINEが開発した教材のひとつに「まじめだね」「おとなしいね」「一生懸命だね」などと書かれたカード教材があります。これらの中から、友だちから言われて嫌な言葉を選んでもらい、グループのメンバー同士で一斉に選んだカードを出してもらいます。当然カードが異なることもあり、そこで自分とクラスメイトの答えが違うことをリアルに感じられます。「違うんだ」と体感することで当事者意識が生まれます。そしてカードを選んだ理由をグループのメンバー同士で話し合うと、個々の価値観などの違いを感じ他者理解を深めることができます。こうした「自分と相手との違い」を意識することがネットコミュニケーションのリテラシー向上には不可欠と考え、教材を作っています。
このほかのカード教材では「されたら嫌なこと」として、「すぐに返信がない」「なかなか会話が終わらない」「知らないところで自分の話題が出ている」「話をしている時にケータイ・スマホをさわっている」「自分が一緒に写っている写真を公開される」の5枚のカードを制作しました。そのカードを自分にとっての嫌な順に並べてもらいます。すると、やはり順番はそれぞれ異なり自分と相手との違いを感じることができます。その上でグループメンバーと対話を重ねることで、他者理解を深めることができるのです。
自分と他者の価値観が異なることを知るのは、日常のモラルの醸成につながります。日常のモラルがしっかりしていれば、インターネット上のコミュニケーションにおいても、トラブルを回避することにつながるのではないでしょうか。
私たちの授業では、私たちからメッセージを出すことはあっても、結論は示しませんし、必ずしも出るわけではありません。個々の価値観が違っていることやインターネットの特性など、さまざまな気づきを対話の中から見つけてもらいたいのです。
LINEが制作した教材はLINEのWebサイトからダウンロードが可能なので、ぜひご活用いただければと思います。