愛媛県独自のICT学習支援システムによる、個別最適な学びと教員負担の軽減
愛媛県教育委員会の谷口京子氏は、県独自のICT学習支援システム「EILS(エイリス)」について紹介した。
EILSはGIGAスクール構想を機に、2021年度に県独自のCBT(Computer Based Testing)システムとして、同県のデジタルコーディネーターである昭和女子大学の森英樹准教授の指導助言を受けつつ、シンプルエデュケーション社と共同で開発されたシステムだ。データの保存・管理には利用が集中する時間帯でも安定稼働が見込めるAWSを採用したという。
EILSの開発コンセプトは「児童生徒の学習の成果と課題を早期把握し、個別最適な学びを実現」することと、「教員の採点・集計業務の負担縮減を実現し、教員が一人ひとりの児童生徒に丁寧に関わる時間の創出」である。
CBT機能以外にも、読書通帳アプリやタイピング検定アプリ、計算検定アプリなどの機能が拡充されてきた。2024年度には、紙テストを自動採点・分析できる「EILS-PBT」を試験導入し、導入校の9割以上の教員が業務負担の縮減を実感するなど、好評の声が多いという。
また、タイピング検定アプリの活用は目覚ましく、年1回実施されるコンテストの結果では、同県の児童生徒のタイピング力が年々確実に向上しており、小学5年生の平均入力文字数が全国平均を大きく上回るといった成果が出ている。
さらに、EILSの導入と日常的な活用により、全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙調査では、「個別最適な学び」に関する質問において肯定的な回答の割合が高まるという変化が見られたという。
一方、同県の課題として谷口氏は「読解力の向上」を挙げ、読解力検定アプリを開発中であることを紹介。加えて、県独自の教材における自動採点機能の充実、そして英語力向上に向けたEILSの機能強化についても取り組んでいるという。具体的には、英文の発音を自動確認できる「スピーキングチェック機能」、聞いた英文をタイピングし、その正確さを確認する「リスニングチェック機能」、生成AIを活用して英会話練習ができるフリートーク教材の開発を進めていることが紹介された。これにはAWSの音声AIモデル「Amazon Nova Sonic」が採用され、AWSと連携して開発が進められている。
谷口氏は最後に、「CBTシステムとしてスタートしたEILSだが、今やさまざまなアプリが加わり、本件の児童生徒にとって学びを補完する大きな存在になっている。今後も学校教育の質の保障と向上のために有効活用を進めていきたい」と、発表を締めくくった。
