みんなのコードは、小学校の女性教員向けに特化したプログラミング教育の研修プログラム「SteP(Step by step for teacher's programming:ステップ)」における、3年間の取り組みをまとめた報告書「小学校女性教員向けプログラミング教育研修プログラム『SteP』の実践と課題」を、7月22日に発表した。

同法人が小学校の女性教員向けプログラミング研修である「SteP」を実施した背景には、「情報主任は男性が選ばれることが多い」「研修の対象が情報主任に限定されている」といった、制度的・文化的なバイアスの存在がある。そこで、女性教員が安心して学べる場を作り、学校現場で一歩踏み出せる環境をつくるべく、2021年度から実施されている。
2021年度からの3年間の活動の中で、「SteP」にはのべ109名の女性教員が参加して、研修や授業支援、コミュニティ運営を通じて学び合いを深めてきた。2021年度の1期では、夏季休暇中の2日間の研修で授業実践や報告会を行っている。あわせて、「LINEオープンチャット」による参加者同士のコミュニティも立ち上げた。
2期では、研修・報告会に加え教材として「micro:bit(マイクロビット)」を提供。これにより、現場での授業実践を後押ししている。
2024年度の3期では、夏と春の2回に分けて研修を行い、参加者への継続アンケートの実施による実践と課題のまとめに取り組んだ。
1期および2期の参加者を対象にしたアンケートでは、女性教員がプログラミング教育に参加しづらい構造的背景の理解、「SteP」を通じて得られた変化や気づき、今後の課題と改善の方向性の整理・可視化に取り組んでいる。
アンケートによって、「SteP」の参加者は、もともと意欲的な教員が多いことが明らかになった。回答者の59.1%が、「SteP」に参加するまでの間に公的研修への参加を経験している。また、2020年の全面実施前からプログラミング授業に取り組んでいた参加者は22.7%となっている。一方で、半数は「SteP」参加以前のプログラミング授業実施経験がなく、経験の有無を問わず参加していたことがうかがえる。

「SteP」への参加前後を比較すると、「SteP」への参加前は「プログラミングの授業に自信がある」という回答は22.7%だったのに対して、参加後は54.5%に増加した。「積極的に授業を実施したい」という回答も36.3%から77.2%に増加している。さらに、プログラミング教育の必修化が決まった際、「やりたくない」と感じた層は60%に達していたが、参加後は0%になった。

「SteP」では、対話を重視した設計や、参加者が安心して「わからない」と言える雰囲気づくりによって、参加者が対話しつつ学んでいく様子がうかがえる。一方で、業務の多忙や女性に偏った家庭・育児などによる研修参加のハードルの高さ、教室での授業実践の定量的な可視化プログラムの有用性の検証を行う必要があるといった課題も浮き彫りになった。
さらに、性別を限定したことで教育委員会など公的機関との連携・協力が得られにくかったことや、オンライン/ハイブリッド開催によって地域性格差を考慮したものの、リアルなつながりの必要性には応えきれなかったことから、制度として定着させるための仕組みづくりが今後の課題といえる。

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