登壇者
- 一般社団法人メディア教育研究室 代表理事 今度(いまど)珠美氏
- 一般社団法人iOSコンソーシアム 代表理事 野本竜哉氏
- 戸田市教育委員会 次長兼教育政策室長 横田洋和氏
- 戸田市立笹目東小学校 土信田(としだ)幸江教諭
- 戸田市立笹目東小学校 笠井一希教諭
- 株式会社翔泳社 EdTechZine 編集長 森山咲(コーディネータ)
デジタル・シティズンシップとは? 情報モラル教育と何が違うのか
「デジタル・シティズンシップで学校が変わる・戸田市の挑戦」と題して行われた本セッションでは、これからの教育になぜ「デジタル・シティズンシップ」が重要なのか、学校現場にどのように導入していくのかについて議論がなされた。本題に入る前、「そもそもデジタル・シティズンシップとは何か」について今度氏が解説した。
「子どもに主体的に考えさせればデジタル・シティズンシップであると勘違いされることもありますが、それはノーです」(今度氏)
今度氏は欧州評議会の定義を引用し、デジタル・シティズンシップとは「デジタル技術の利用を通じて社会に積極的に関与し、参加する能力のこと」と説明。これまでの情報モラル教育のように、個人の安全な利用のためだけに学ぶのではない。人権と民主主義のための、情報社会を構築する善き市民になるために学ぶ「市民教育」。それがデジタル・シティズンシップ教育のポイントだ。
全国でも有数のICT教育先進自治体と言われる戸田市では、デジタル・シティズンシップ教育にも力を入れている。同市の教育委員会で次長兼教育政策室長を務める横田氏が、実践の概要を説明した。
「『危ないからどうやって使わせないようにしようか』というのがこれまでのICT活用だった」と横田氏。しかし、これからはICTの活用を前提に課題を解決する学びへと変わっていく。そのためには「まず大人がチャレンジすることが重要だ」と横田氏は強調した。戸田市では教育長の戸ヶ﨑勤氏が就任した8年前から、「経験と勘と気合い」の「3K」で納得してしまう教育現場の文化を「客観的な根拠」重視の文化へと変えるべく、「戸田市SEEPプロジェクト」を開始。ICTおよびデータを活用した教育変革を進めてきた。
戸田市SEEPプロジェクト
- Subject:教科の本質をとらえた授業改善をはじめ、すべての取り組みを学びに結びつける
- EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、証拠に基づく政策立案):「授業」「生活指導」「学校・学級経営」を科学する
- EdTech:テクノロジー活用による新たな学びの想像
- PBL:実生活・実社会のリアルな課題を探究的に解決する学びの推進
プロジェクト開始当初より、同市の教育委員会では「新たな学びのための原材料や人財は用意するので、料理は各学校で行ってほしい」ということを伝えてきたが、その後徐々に自走できる学校が増えてきた。さらに現在は「子どもたちがICTを活用するシーンを自ら選んでおり、まさに学習者主体の利用ができている」と横田氏は述べる。