第4次産業革命、人生100年を生き抜く――求められるのはチェンジ・メイカー
経済産業省は現在を「第4次産業革命」「人生100年」の時代と位置づけ、それに対応する人材育成の課題と方向性を探る取り組みを進めている。平成29年度補正予算では「学びと社会の連携促進事業」に25億円を新規計上し、事業イメージとしてEdTechの創出、導入ガイドラインの策定などが含まれている。
すでに産業界の人材力強化については2017年より「わが国産業における人材力強化に向けた研究会」が始まっているが、これが「出口の人材像」(経済産業省 教育サービス産業室 浅野大介氏)とすれば、「『未来の教室』とEdTech研究会」は学校にとどまらない、私塾やリカレント教育を含めた教育現場が対象になる。
設置は1月16日に発表された。19日の研究会に姿を見せた経済産業大臣の世耕弘成氏は、「米国や中国では、第4次産業革命を生き抜く人材育成という視点で、創造性、課題の解決力、科学技術といった点を重視する教育改革が進んでいる。日本は遅れている」と述べた。実際、受託事業者のボストン・コンサルティング・グループによると、オバマ政権時にEdTech普及を積極推進した米国、約4兆円規模の予算を投じる中国、プログラミングを入試科目に採用している英国など、各国でEdTech受け入れに向けた動きが進んでいるという。EdTechの世界市場規模は、2020年に11兆円とも予想されている。これは2015年の倍以上となる(富士キメラ総研調べ)。
世耕氏は「人生100年」にも触れ、「生涯学び続ける教育環境」が必要との考えも示した。「就学前教育、学校教育、リカレント教育、それぞれの現場が目指すべき未来の教室の姿、そしてその実現のために開発されるべきEdTechの姿、そして全国の教育現場への普及に向けた制度や市場の課題を検討すべく、この研究会を立ち上げた」と述べ、この研究会での議論を踏まえてEdTech活用プロジェクトを現場に導入していきたいとした。
設置目的を詳細に話した浅野氏は、「世界では創造性、課題設定・解決力を軸に人材開発競争が進んでいるが、学習の個別化、創造性向上、文理横断などを可能にするEdTechがそれを支えている」と述べる。
キーワードは「チェンジ・メイカー」だ。と言っても、「全員がスティーブ・ジョブズになることではなく、『50cm革命』とする小さなレベルで変化を作ることができる人」だという。この流れから同省では「(1)非認知能力の向上」「(2)社会・仕事・趣味と学びの接続」「(3)学力やスキル向上の個別化と効率化」の3点が、未来の教室とEdTechに求められるものと仮説する。
この研究会で議論を深めるにあたり「教育EBPM」が重要になると浅野氏は話す。これはエビデンスに基づく教育イノベーションを指し、「いくらいいものを考えても証拠なしには伸ばしていくことができない」と、証拠を出しながら認知させることで広がるというアプローチを共通課題に挙げた。