信頼関係とコミュニケーション、校内研修が学校全体でのICT活用につながる
沖縄県国頭郡東村立東中学校の事例
続いて紹介する事例は、沖縄県の北部に位置する国頭郡東村の取り組みだ。国頭郡東村は沖縄本島では最も少ない人口約1700人の自治体で、村立の小学校2校と幼少中学校1校が所在する。
2021年4月には東村の全校に1人1台の Chromebook が整備され、本格運用が始まった。このうち、東村立東中学校では前年度の2020年9月、試験的に20台の Chromebook が先行導入された。
同校で試験導入後に最初に行ったのは、生徒に向けた Chromebook 活用のリーダー研修だ。「端末やアプリの操作に慣れた生徒を育成したい」という目的で、オンラインによる操作指導を実施。自宅や部活後の教室など、各自がさまざまな場所から参加したが、教員側の予想以上に生徒は初めて使った「Google Jamboard」を使いこなしたという。
同校で情報担当を務めている音楽専科の大嶺はづき教諭は「最初は Chromebook の画面にタッチペンで書けることを知らなかったが、研修で生徒が発見し教えてくれるなど、教員側にも大きな気づきがあった」と話す。また、生徒が率先して使いこなすことで、ほかの教員が授業でパソコン操作を生徒に教えなくてもいい状況を作り出すことができ、授業をスムーズに進められるというメリットも生まれた。「生徒が使いこなす姿を見て感化され『自分も使いこなさなければ』と、ICT活用に積極的になった教員もいた」という。
同校では現在、教科学習から部活動までのさまざまな形で Google アプリと Chromebook を日常的に活用している。
例えば大嶺教諭による音楽の授業では、コロナ禍で合唱の練習ができないため、Classroom にパートごとの音源を配信し、各自の端末とイヤホンで聴いて練習する方法をとった。結果として「感染症対策にも有効だっただけでなく、パートの音取りも早くなったことを実感した」という。さらに楽譜をオンライン上で共有し、気づきを生徒が書き込んでいくことで「一緒に合唱の練習ができなくても、お互いの意識を合わせることができ、共有機能のメリットを感じた」と話した。
同校は、Google サイト を活用して生徒会選挙も実施。また朝の全校朝会が急きょオンラインに変更になった際は、中学生が小学校の教室に行きサポートに入ったが、普段から授業で使っていることもあって全員が迷わずに「Google Meet」に参加できたという。
これらの経験を踏まえ、大嶺教諭は「ICTを活用していくには『すぐ聞ける・すぐ対応できる・すぐ解決する』のコミュニケーションがとれる環境や、教育委員会、管理職、先輩教員、同僚との信頼関係が本当に大切だと改めて感じた」と、2年間の取り組みを振り返った。
同校で技術家庭科を担当する銘苅大元教諭は「東中学校の強みは、1人の教員だけがICT活用に取り組むのではなく、チームとして全体で取り組んでいること。早い段階で最も活用できる教員に授業をしてもらい『こういった活用の仕方がある』ということを、全教員が知ることができたのも大きい。ICT活用に対して前向きでない教員を巻き込むには、校内研修を行うことが一番」と、同校で全教科に活用が広がっていった理由を明かした。
大嶺教諭も「ICTの校内研修を行ったことで全教員の意識が変わり、授業での活用をベースに動き始めた。最初のきっかけは『やらされた』だったのかもしれないが、使ってみるとさまざまな発見があり『使いたい』に変わっていった」と、校内研修が大きな転機になったと語った。