Google Classroom を日常的に使うことで休校時も迅速に対応
琉球大学教育学部附属小学校・中学校の事例
沖縄県におけるGIGAスクール構想では、那覇市や沖縄市をはじめとした多くの自治体が「Google Workspace for Education」と Chromebook を採用した。
沖縄県唯一の国立小中学校である琉球大学教育学部附属小学校・中学校では、附属校としての使命・目的として「実験的・先導的な教育課題への取り組み」を実施している。2020年8月には「1人1台」環境として、小中学校で合計900台の Chromebook を導入した。
沖縄県では新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年度に続いて2021年度も3回の休校を余儀なくされた。その際に活用されたのがこの Chromebook だ。琉球大学教育学部 学校教育教員養成課程 准教授の岡本牧子氏によると「琉球大学教育学部附属小学校・中学校の全学年で『Google Classroom』を使用し、休校中に情報共有や授業配信などを行った」という。
小学校では、2021年の6月と9月の休校の際、4年生以上の高学年はオンライン授業を、3年生以下の低学年はオンデマンド学習を実施。同校では2020年度から学級ごとの Classroom で、子どもの日常が見られるように保護者へ向けて動画を配信していた。保護者も日ごろから動画配信などの操作に慣れていたことで、休校期間中のオンライン授業にもスムーズに対応することができたのだ。自宅にWi-Fi環境が整っていない家庭に対しては、琉球大学所有のモバイルルーターを貸し出すことで「学びを止めない」環境づくりを行った。これらの経験の蓄積により、2022年1月の休校時にはオンライン授業の対象を3年生まで引き下げられたのだという。
また家庭に Chromebook を持ち帰る場合は、保護者向けの同意書とあわせて、子どもと一緒に読むためのセキュリティ学習のプリントを配付した。家庭での使い方については「動画ばかり見てしまう」といった保護者からの声も上がる中、同校においては持ち帰った Chromebook で YouTube を見られない設定にするなどの配慮を行っている。端末整備の課題として避けられない「児童生徒のセキュリティリテラシーやマナー」については「イタチごっこの部分がある」としながらも、「勉強に使う便利な道具」としての指導を行っている。
休校期間終了後の分散登校時には、オンラインと教室の児童が一緒に授業を受けるハイブリッド型の授業に取り組んだ。岡本氏によると「登校再開後も、濃厚接触者の自宅待機や感染不安による家庭学習の要望に応える形で、授業をオンラインで配信し参加できるようにしている」など、休校時のオンライン授業で培ったノウハウをもとに、端末を積極的に活用している。
[※1]MM総研「GIGAスクール構想実現に向けたICT環境整備調査」より
信頼関係とコミュニケーション、校内研修が学校全体でのICT活用につながる
沖縄県国頭郡東村立東中学校の事例
続いて紹介する事例は、沖縄県の北部に位置する国頭郡東村の取り組みだ。国頭郡東村は沖縄本島では最も少ない人口約1700人の自治体で、村立の小学校2校と幼少中学校1校が所在する。
2021年4月には東村の全校に1人1台の Chromebook が整備され、本格運用が始まった。このうち、東村立東中学校では前年度の2020年9月、試験的に20台の Chromebook が先行導入された。
同校で試験導入後に最初に行ったのは、生徒に向けた Chromebook 活用のリーダー研修だ。「端末やアプリの操作に慣れた生徒を育成したい」という目的で、オンラインによる操作指導を実施。自宅や部活後の教室など、各自がさまざまな場所から参加したが、教員側の予想以上に生徒は初めて使った「Google Jamboard」を使いこなしたという。
同校で情報担当を務めている音楽専科の大嶺はづき教諭は「最初は Chromebook の画面にタッチペンで書けることを知らなかったが、研修で生徒が発見し教えてくれるなど、教員側にも大きな気づきがあった」と話す。また、生徒が率先して使いこなすことで、ほかの教員が授業でパソコン操作を生徒に教えなくてもいい状況を作り出すことができ、授業をスムーズに進められるというメリットも生まれた。「生徒が使いこなす姿を見て感化され『自分も使いこなさなければ』と、ICT活用に積極的になった教員もいた」という。
同校では現在、教科学習から部活動までのさまざまな形で Google アプリと Chromebook を日常的に活用している。
例えば大嶺教諭による音楽の授業では、コロナ禍で合唱の練習ができないため、Classroom にパートごとの音源を配信し、各自の端末とイヤホンで聴いて練習する方法をとった。結果として「感染症対策にも有効だっただけでなく、パートの音取りも早くなったことを実感した」という。さらに楽譜をオンライン上で共有し、気づきを生徒が書き込んでいくことで「一緒に合唱の練習ができなくても、お互いの意識を合わせることができ、共有機能のメリットを感じた」と話した。
同校は、Google サイト を活用して生徒会選挙も実施。また朝の全校朝会が急きょオンラインに変更になった際は、中学生が小学校の教室に行きサポートに入ったが、普段から授業で使っていることもあって全員が迷わずに「Google Meet」に参加できたという。
これらの経験を踏まえ、大嶺教諭は「ICTを活用していくには『すぐ聞ける・すぐ対応できる・すぐ解決する』のコミュニケーションがとれる環境や、教育委員会、管理職、先輩教員、同僚との信頼関係が本当に大切だと改めて感じた」と、2年間の取り組みを振り返った。
同校で技術家庭科を担当する銘苅大元教諭は「東中学校の強みは、1人の教員だけがICT活用に取り組むのではなく、チームとして全体で取り組んでいること。早い段階で最も活用できる教員に授業をしてもらい『こういった活用の仕方がある』ということを、全教員が知ることができたのも大きい。ICT活用に対して前向きでない教員を巻き込むには、校内研修を行うことが一番」と、同校で全教科に活用が広がっていった理由を明かした。
大嶺教諭も「ICTの校内研修を行ったことで全教員の意識が変わり、授業での活用をベースに動き始めた。最初のきっかけは『やらされた』だったのかもしれないが、使ってみるとさまざまな発見があり『使いたい』に変わっていった」と、校内研修が大きな転機になったと語った。
優れた堅牢性で子どもたちの創造性を育む「Dell Chromebook」
今回紹介した沖縄県の事例では、いずれもデル・テクノロジーズの「Chromebook 3100 2-in-1」を採用。同製品はそのほか、福岡市や姫路市などの自治体にも導入されている。
デル・テクノロジーズのフィールドマーケティングマネージャーである大久保彩花氏によると、同社の製品は「数あるメーカーの Chromebook の中でも、より優れた堅牢性が特徴」だという。
本体のふちの部分にはラバー素材が採用されており、万が一手を滑らせて落としても、ラバーが衝撃を吸収してディスプレイや本体の破損を防ぐ。東中学校の大嶺教諭も「導入以前からデモなどで頑丈さを目にしていた。学校で生徒が転んだ際も、持っていた Chromebook を盾にしたことで事なきを得た。下敷きになった端末は問題なく使い続けられたことで壊れにくさを実感し、非常に大きいメリットだと感じた」と同社製品の堅牢性について語っている。
さらに2022年1月には後継機となる最新モデル「Chromebook 3110」と「Chromebook 3110 2-in-1」が発売された。いずれも11インチサイズで、CPUには2021年に発売されたばかりの教育向けCPU「インテル Celeron N4500 デュアルコア」を、メモリーには低消費電力でデータ転送速度の速い「LPDDR4x Non-ECC 2933MHz」(4GB/8GB)を搭載し、旧モデルから性能が向上している。
「3110」シリーズは、耐久テストとしてアメリカの国防省などでも採用されているMIL規格の「MIL-STD-810H」のうち、17項目のテストを実施しクリア基準に達している。大久保氏は「上からの落下、移動中の振動、高温多湿の環境での操作確認に加え、水滴耐久テストなども行っており、大きめのコップ1杯分にあたる約340mlの水滴も耐えられるよう、キーボードも防滴処理が施されている」と、耐久テストの内容を解説。特に学校現場では子どもたちが激しく開閉することも多く、ヒンジ部分のトラブルが発生しやすいが、その点「3110」シリーズでは3万回もの開閉に耐えうるヒンジの耐久テストも行われているため安心だ。
またキーボードには、外れにくい「リテンション・キーキャップ」を採用。現場の教員からは「子どもたちがキーボードのキーを外して文字を入れ替えてしまうことを防げる」と好評だ。
「Dell Chromebookは子どもたちが多少乱暴に扱っても壊れにくいという安心感がある。学校現場において子どもたちがのびのびと Chromebook を使えることは、創造性を育む意味でも重要だ」と大久保氏は話す。
最新モデルでは新規格のWi-Fiを搭載し、インターフェースも強化
最新モデルの「3110」シリーズでは、さらにいくつかの新機能が搭載された。
そのひとつが通信環境だ。両モデルともより安定した通信が見込める新規格「Wi-Fi6」を採用したほか、クラムシェル型のChromebook 3110はオプション対応のLTEを搭載すれば、いつでもどこでもインターネットへの接続が可能だ。Google アプリはオフライン時も使用できるが、やはり最大の強みである「リアルタイムでの共有」を活用するのであれば、家庭や校外での学習など、場所を問わずネットにつながるメリットは大きい。
またインターフェースも強化され、教育現場からの要望が多かったHDMIポートを搭載。これにより、電子黒板などの大型ディスプレイやプロジェクターなどにも接続しやすくなった。
さらにChromebook 3110 2-in-1では、ペンで手書き入力ができるスクリーンをオプションで選択できる。 対応するペンをこれまでの「EMR(電磁誘導方式)」から、手書きの精度に特化した「USI(Universal Stylus Initiative)」に変更。優れた筆圧検知を実現することで、手書きでの操作がよりアナログに近いものになった。同社から専用USIペンの販売は行われていないが、他社製品を利用できる。手書きで文字を書くことの多い小学校低学年においては、子どもたちがより自然に手書きを行える環境を用意することも重要と言える。
Chromebook はGIGAスクール構想以前にはなじみがなく、学校現場からは現在も時折とまどいの声が聞かれる。しかし実際に活用した教員からはさまざまな実践が報告されており、何よりも子どもたちが生き生きと Jamboard や Google ドキュメント、Google スライド などを駆使し、共有機能を使いこなしている姿も多く目にするようになった。Chromebook はこれらの Google アプリを使うための最適の道具であり、高速起動によりスマートフォンのような感覚でストレスなく操作することができる。子どもたちのこれからの学びを広げ深めていくツールのひとつとして、ぜひ活用してほしい。