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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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イベントレポート(プログラミング教育)

渋谷区の官民連携プログラミング教育の今とこれから――「Kids VALLEY」参加企業担当者が語る

 渋谷を拠点とする企業による「Kids VALLEY 未来の学びプロジェクト」は、渋谷区立小中学校のプログラミング教育を支援するために2019年に発足した。3年目を迎えたこの夏、「プログラミングサマーキャンプ2021」を開催し、各社がオンライン等でワークショップを実施。8月20日には関係者によるトークセッションが開かれ、活動内容を紹介し意見を交わした。

渋谷区の官民連携プログラミング教育モデル「Kids VALLEY」

 渋谷区は、国がGIGAスクール構想を推進する以前から独自の計画でICT活用を進めてきた。2017年には1人1台の端末環境を整え、2020年には端末のリプレースを行い現在では「Surface Go 2」を区立小中学校の全児童生徒に貸与している。その渋谷区教育委員会と連携し、東急株式会社、株式会社サイバーエージェント、株式会社ディー・エヌ・エー、GMOインターネット株式会社、株式会社ミクシィの5社が連携してプログラミング教育のサポートを行う官民連携モデルが「Kids VALLEY」だ。

Kids VALLEYはカリキュラム提供、出張授業、教員研修等を担っている
Kids VALLEYはカリキュラム提供、出張授業、教員研修等を担っている

 トークセッションのモデレーターを務めた、東急株式会社 沿線生活創造事業部 ウェルネス事業推進グループ 課長の稲葉弘氏は「行政や学校だけでも、また、民間各社バラバラでもできないことを、渋谷にある最高の環境とリソースを集結させることで、日本の未来を共につくっていくという思いをひとつにプロジェクトを推進してきました」とその意義を説明した。

 プログラミング教育は2020年に小学校で必修化され、2021年には中学校で扱うプログラミングの学習内容が拡充された。Kids VALLEYは授業教材や出張授業に加え、先生への研修も行う。ゲストの渋谷区教育委員会事務局 指導主事である大塚和男氏は「先生方も最初はプログラミングと聞くだけで苦手意識がいっぱいで大変な思いをされていましたが、企業の皆さまの支援を受け、子どもたちがプログラミングを楽しむ姿を見て、大いに変わろうとしています」とその変化を実感している。

 トークセッションでは、実際に支援を行うIT企業4社から、プログラミング教育に関わる担当者が登壇し、活動内容や現場の実感を紹介した。

IT企業からの登壇者

  • 株式会社サイバーエージェント エデュケーション事業部部長 上野朝大氏
  • 株式会社ディー・エヌ・エー プログラミングゼミ開発者 末広章介氏
  • GMOインターネット株式会社 デベロッパーエバンジェリスト 成瀬允宣氏
  • 株式会社ミクシィ 開発本部 CTO室 田那辺輝氏
左上から時計回りに、東急株式会社 稲葉氏、株式会社ミクシィ 田那辺氏、GMOインターネット株式会社 成瀬氏、渋谷区教育委員会 大塚氏、株式会社ディー・エヌ・エー 末広氏、株式会社サイバーエージェント 上野氏
左上から時計回りに、東急株式会社 稲葉氏、株式会社ミクシィ 田那辺氏、GMOインターネット株式会社 成瀬氏、渋谷区教育委員会 大塚氏、株式会社ディー・エヌ・エー 末広氏、株式会社サイバーエージェント 上野氏

【サイバーエージェント】民間スクールのノウハウと経験を生かす

 株式会社サイバーエージェントは、小学生向けプログラミング教育専門の子会社があり、2013年より「Tech Kids School」というプログラミングスクールを運営している。プログラミングの技術を身につけられるスクール運営と共にコンテストの実施等にも積極的だ。Kids VALLEY設立前から区立学校の支援をしていたこともあり、経験値が高い。

 小学校のプログラミング必修化は、新たにプログラミングという教科ができたわけではなく、主に既存の教科の時間にプログラミングを実施し、教科の学びを深めることになっている。これを踏まえ、上野氏は同社が考える小学校でのプログラミング授業の流れを説明した。

 同社では、小学校で子どもたちがプログラミングを学ぶにあたって、いきなり教科の中にプログラミングを入れるのはハードルが高いと考えている。そのため出張授業では、まず低学年~中学年ではプログラミングそのものを学び、慣れたところで、高学年では教科の中でプログラミングを扱うという2段階のステップで授業を設計している。

サイバーエージェントの考える授業ステップ
サイバーエージェントの考える授業ステップ

 中学年で実施した出張授業はScratchで簡単なゲームをつくるという内容。高学年では学習指導要領に例示されているうち、6年生の理科の「電気の性質とその利用」でmicro:bitと豆電球を教材に実施した。

【DeNA】「プログラミングゼミ」で低学年から無理なく学習

 株式会社ディー・エヌ・エーは「プログラミングゼミ」という子ども向けのプログラミングアプリを開発し、一般向けに無料でリリースしており、渋谷区ではすべての児童のPCにインストールされている。学校教育で使うことを想定して設計されたアプリで、低学年でも使いやすい工夫が施されている。自分で描いた絵を取り込んでオリジナル作品をつくれるだけでなく、プログラミングの基礎を学べるコンテンツも用意されている。

さまざまな教科と学年に対応した授業用プログラムがアプリから使用できるように配信されている
さまざまな教科と学年に対応した授業用プログラムがアプリから使用できるように配信されている

 末広氏は、低学年からプログラミングに取り組むことのメリットを次のように挙げる。心理的ハードルが下がりプログラミングを楽しいと感じられる上、早くから慣れることによって自然とプログラミング的思考で考えられるようになり、その分教科目標に集中できるということだ。

 また、渋谷区の特徴として、タブレットが日常的なツールになっているため、準備等に時間がかからずスムーズに授業がスタートできる点を挙げた。グループワークツールである「Microsoft Teams」で先生と連絡が取れるといった学校のICT活用体勢も、支援の際に便利だという。教科の学習内容とプログラミング教材のすり合わせは苦労するポイントだが、先生と議論しながら深めている。

次のページ
【GMOインターネット】プログラミングの基礎的な考え方を学んでほしい

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この記事の著者

狩野 さやか(カノウ サヤカ)

 株式会社Studio947のデザイナー、ライター。ウェブサイトやアプリのデザイン・制作、技術書籍の執筆に携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、子ども向けプログラミングやICT教育について情報発信している。著書に『見た目にこだわる Jimdo入門』(...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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