ICT機器を導入しただけでは授業は変わらない
「ICT夢コンテスト2016」でNHK賞を受賞した吉金教諭は、理科の専科教員として、宝仙小に11年間勤務。2017年からは情報化委員会の主任を兼任し、ICT機器の導入から管理、運用までを担っている。
「これまでの教材に使われていたDVDやCD、ラジカセといったものを、徐々にデジタル教材へと移行させている」と話す吉金教諭だが、実はICTについては、もともとはそんなに好きではなかったという。
「電子黒板や実物投影機など、これまでのICT機器は、教師が教えるためのツールでした。正直、それだけでは、授業が変わるイメージができませんでした」
そんな折り、授業支援ソフトの「ロイロノート・スクール」に出会い、大きな衝撃を受ける。
「『これなら授業が変わるな!』と思いました。ロイロノートは、授業中に児童が実験の動画や静止画を撮影して、保存や共有ができる。発表にも適していて、理科の授業と非常に相性が良かった。2014年の1月にロイロノートのユーザー会で初めてアプリに触れて、翌月にはもう校内で体験会を実施していました。その手ごたえを感じ、3か月後の新学期に『Windowsタブレット』を12台導入しました」(吉金教諭)
その後、ロイロノート・スクールは、理科だけでなく国語や体育など、多くの授業で活用されるようになった。
「タブレットは児童自身が学ぶツール、つまり学習者が主となるツールです。でも、タブレットや電子黒板があるだけでは変わらない。教員が、自分の授業で『児童たちが使うシーンがイメージできること』によって初めて変わる。そうすれば、児童たち自らがタブレットという道具を、どんどん進化させていきます」(吉金教諭)
宝仙小のICT導入までの歩み
現在、宝仙小には電子黒板(IWB)のほか、大型ディスプレー、実物投影機などが全教室に設置されている。さらに、iPadやWindowsタブレットあわせて全185台のタブレットが児童用・教師用として稼働している。
現在はかなりそろっているICT機器だが、導入はスモールステップで少しずつ台数を増やしていったという。吉金教諭によると、最初はタブレットも学内に数台しかなかった。2014年にタブレットを12台導入し、その後に約25人の教職員全員に1台ずついきわたるよう増やしていった。2016年にタブレットの本格導入を始め、2016年に76台、翌2017年には85台を導入した。
機器を導入するにあたっては、それが本当に必要な機材か、児童や学校に合っているかどうかを検討するのも、吉金教諭らの担当だ。
「ICT機器や教材は次々と新製品が登場するので、一時期は毎日のようにメーカーの担当者と実際に会って、製品やサービスの話を聞いていました。その教材が未来を見据えて作られているか、そして企業がきちんとバックアップしてくれるか。さらには、学校を盛り立ててくれる、学校と一緒に成長してくれる企業かどうかは、会って話せばわかってきます」(吉金教諭)