Slackは「デジタルキャンパス」である
さまざまな組織やチームでの活用が進んでいる「Slack」だが、大学をはじめとする教育機関での活用も広がっている。Slack Japanでもエデュケーションタスクチームが組まれ、学生を対象にした日本最大規模のハックイベント「JPHACKS」の支援や教育機関向けウェビナーの開催など、さまざまな活動を通じて教育機関におけるリモートコミュニケーションのあり方を提案している。
Slackはビジネス向け「チャットツール」というイメージが先行しがちだが、Slack自身は「学んだり仕事をしたりするためのコミュニケーションの場を提供する」と提唱している。つまり、学内のみならず学外ともつながり、隔離された安全な場で産学連携や共同研究などが容易にできるのである。となると「コミュニケーションツール」と思われるが、さらに2300以上のアプリケーションと連携でき、必要なメンバーと必要な情報を共有しながら、コラボレーションが可能になる。
つまり、Slackは「必要なときに、必要な場所で、あらゆるデバイスでも」使える、「『仮想的な』キャンパス=デジタルキャンパス」というわけだ。
コミュニケーションツールだけでなくプラットフォームとしての価値を実感
まず1つ目の事例として、2020年4月に開設された高校生・大学生向けのオンラインキャンパス「つながるキャンパス」での活用が紹介された。
社会人サポーターを務める山口春菜氏は、株式会社パソナJOB HUBに所属し、ソーシャルイノベーション部のワーケーションプロデューサーとして、地方企業と都市部の人材を副業やワーケーションでマッチングする「地方創生」サービスを担当している。山口氏自身も「旅するようにはたらく」をコンセプトに、さまざまな地域を回りながら仕事を続けているという。
「つながるキャンパス」は、高校生・大学生を対象にした「オンラインキャンパス」だ。約360人が登録し、100を超える社会人や企業が支援を行っており、「人と出会う、地域とつながる、共に学び合うプラットフォーム」としてボランティアにより運営されている。
コロナによる学校の閉鎖などにより、高校生、大学生の学習や就職活動に遅れが生じ、孤独を感じる人も増えたことから、つながりの場をオンライン上で提供し、学習から生活、キャリア相談まで横断的な支援を目的としている。長期的な影響を鑑みて学びの機会損失を補填したり、これまでの仕組みが破綻する中で新しい地域や社会とのつながりを創出したりするなど、さまざまな取り組みを行ってきた。
このプラットフォームにSlackを活用し、学生同士で雑談する「ほっこりたまり場」や社会人サポーターが就職相談を受ける「キャリアセンター」、地域の人同士でつながれる「地域チャンネル」などのチャンネルが用意されており、PCやスマートフォンがあれば、どこからでもアクセスすることができる。
「社会人サポーター同士でやりとりするチャンネル以外はカギをかけず、基本的には参加者同士が自由につながれるようにオープンにしている。Slackは、スマホからも操作が容易で、気軽に気になった相手と連絡がとれる」と山口氏はSlackのオープンな設計を評価する。
利用は自主性に任せられており、厳しいルールは設定されていない。しかし不正な書き込みやネットワークビジネスの勧誘などがないよう、基本的にはエントリーして実名で参加する仕組みになっているほか、社会人サポーターがパトロールするなど、相互監視も呼びかけている。なお今のところ、トラブルは起きていないという。
山口氏は、「Slackはまさにコミュニケーションのプラットフォームだと感じている。自分の学生時代にはオンラインキャンパスなど想像できなかったが、実際に体験してその良さがわかった。ただコミュニケーションをオンラインでするだけでは孤独を感じる。直接会うことができなくても交流できる『プラットフォーム』があること自体が大切。これからはリアルとオンラインのキャンパスの両方が重要になると思う」と語り、単なるコミュニケーションツールとしてではなく、プラットフォームが創出する価値を評した。